樋口恭介
今『美しい顔』に問われている論点は以下だと思っていて、

@法的な妥当性
A文章表現の創造性
B小説全体の構築性/強度
C震災を扱う手続きの倫理性(取材有無)
D商習慣上の妥当性(仁義)

全文公開だけだと、Bしか解決できないんじゃないかな。やっぱり包括的な議論と批評的な整理が必要だと思う。

@は法の専門家の判断が必要
Aは石井光太さんの作品自体に「想像で書かれた文章」という批判があり、かなりこみいった物語論が必要
Bは読者に委ねられるので事実上解決
Cは手記を参照した前例は多くあり、取材しないのは問題ない。震災を特別視すべきか否かが争点
Dは今後編集者の教訓にすればよい

こういうときはフリッパーズ・ギターの『ヘッド博士の世界塔』を聴いて落ち着いたほうがいい。
今聴いても/今聴くと、そこまでサンプリングするのか!という驚きがあります。
2018年7月3日
超鮮やかな読解。そう言えば荻上さんは石原千秋門下なんだなと。↓

「「美人作家の芥川賞候補 パクり問題で告発」とか「大炎上」みたいな形の、
いわゆるわかりやすい物語[…]を、この作品自身が実は告発している」

荻上チキ 芥川賞候補作 北条裕子『美しい顔』問題を語る
2018年7月4日
経緯を読んだけど、新潮社はCの倫理やコストに強い関心がある一方で、
講談社はDに関わる過失についてのみ言及していて、議論の方向性が合っていないように思えた。
そしてABは置かれているところを見るに、これはもう創作表現の話ではなく、
単にコミュニケーションの話でしかないんだなと思った。
2018年7月6日