ハン・ガンのノーベル賞追い風 韓国20世紀文学次々刊行
www.nikkei.com/article/DGXZQOUD068DI0W4A101C2000000/

作家ハン・ガンのノーベル文学賞受賞が決まったのを機に、韓国文学を再評価する機運が高まっている。
これまでは現代小説に翻訳が集中しがちだったが、手薄だった過去の名作小説も刊行されはじめた。

韓国文学の出版を手がけるクオン(東京・千代田)は10月、
長編小説『土地』(全20巻、金正出監修、吉川凪、清水知佐子訳)を全巻刊行し終えた。
同作は、朝鮮王朝末期から日本の植民地時代を経て1945年に「解放」の日を迎えるまで、
時代に翻弄される人々の姿を描いた骨太の大河小説。
作家・朴景利が60〜90年代にかけて執筆した韓国文学の金字塔だが、日本語完訳はこれが初めてだ。

「ハン・ガンさんの受賞で、韓国文学の知名度は飛躍的に高まった。
これまでは韓国の小説といえば2000年以降に刊行された作品が大半だったが、幅を広げる時期に来ている」
と代表の金承福さんは狙いを語る。

金さんは10年代半ばから始まった韓国文学ブームの立役者の一人だ。
当時無名だったハン・ガンの『菜食主義者』などをいち早く日本語で出版し、
30〜50代の若手・中堅作家の作品を数多く発掘・発信してきた。
そうしたブームの旗手が一転して、過去の名作の紹介に力を入れはじめた。

今後は、20世紀の代表作を紹介する「韓国文学の名作」と題したシリーズと現代詩集を中心に刊行する。
同シリーズからは既に、『幼年の庭』(呉貞姫著、清水知佐子訳、3月)など6冊が刊行されている。