ダァァーーーーン!
銃弾が貫き、俺の存在はかき消えた。

(いったい誰としゃべっている?)
宮入のあごはとっくに感覚を失っていたが、
それでも毒を吸い続けるのをやめるわけにはいかない。
−− 時間を稼ぐ。
頭をフル回転させ、逆転の機会を探るのだ。

春に異動してきた若手の検事は、既に異変に気づいて手を打っていることだろう。
そう考えていると、窓の外に位置する向かいのマンションの一室が見えた。
いや、室内は見えない。見えたのは閉まっているカーテンと、その隙間からのぞく何か。
(早いなんてもんじゃないな)
確信だった。…というよりもあれで隠しているつもりか。
額を流れる汗、その温度が低くなった。