【星々を巡る(AToW抄訳)】
以下の概要は、プレイヤーキャラクターが遭遇するであろう中心領域や氏族宙域の様々な惑星の社会や文化、経済と産業の幅広い要
素について、5つのサンプル惑星の事例を添えて述べるものである。
人類宇宙にまたがる社会と文化
このセクションでは、バトルテック宇宙の全ての惑星に共通する社会と文化の側面について要約する。
各種の政府
20世紀の地球で開花した民主政体と共和政体は、21~22世紀の地球やその後の植民地では衰退していき、その後は事実上の独裁政体
である地球同盟(公式には代表民主制)による統治が始まった。皮肉にも、同盟を支配したしばしば冷酷なエリート達は、議会制民主
主義を自認する国々によって選出されていた(同盟政府は人口と資産規模に応じてより多くの投票権が明確に与えられていたので、西
側の『先進』各国とアジア圏の少数の当て馬による支配が確立していた)。このような独裁的環境を経ていた地球からの植民者達も、
いったん地球同盟の惑星知事を排除してから自らを支配する小集団や個人を選出した。24世紀に地球帝国が復活させた貴族称号(実権
を与えるというより社会的報酬を意図したものだった)は、宇宙の各所に植民した散在する『名家』や独裁者、寡頭政治体制の想像力
を刺激した。その模倣が即座に花開いた結果、新封建制が国家統治の(トップレベルにおいて)主流となったのである。
このような封建的な指導体制の公式化は単なる形式のみに留まらなかった。2630年にHPGが発明されるまで、恒星間国家はその広大
さ故に数ヶ月をかけて宅配便通信を行っていたため、この体制は実用的でもあった。新封建制による政府構造は、低速な通信と輸送の
ために切り離されていたほとんどの自治惑星世界や宙域で国家を組織するのに有用だった。この制度は現代に至っても様々な場所で残
存し続けている。
それとは対照的に、個々の惑星政府は多種多様な形態を持っている。いくつかの大王家や地球帝国が独裁制から始まったのと同様に、
惑星レベルにおいてこの種の独裁政府は珍しくない。長期にわたって存続するに至った成功した独裁制は、専制(個人統治の場合)や
寡頭制(小集団による統治の場合)とみなされる。封建政府は寡頭制の派生とみなすことができ、349-359ページの『政治と軍事力』
で詳述されている。神権政体は宗教的な専制/寡頭制の一形態である。ワードオブブレイクの例に加えて、自由世界同盟のシローなど
のような惑星規模の神権政体がいくつか存在している。
氏族は寡頭制の珍しい事例である。5つのカースト(労働者、技術者、商人、科学者、戦士)が各カースト内で等級と階級を細分化
しており、最上位の人物を統治評議会に送り込んでいる。公式の支配者は氏族長(戦士カーストの指導者)なのだが、その実態は民間
評議会から上がってくる非軍事的な決定の大半にめくら判を押しているにすぎない。
代表民主制は有権者によって選出された小グループによる政府である。この定義に該当する政府は、中心領域の過半数を僅差で上回
り、辺境においてはいくぶん多数派で、そして氏族宙域には存在しない。これらの選出された惑星政府の指導者達は、その任期中は大
王家から封建爵位を受け取ることで封建的な恒星間政府及び他の離れた世界の貴族代表との繋がりを維持する事ができる。自由世界同
盟は書類上では代表民主制だが、決議288号の『非常事態権限』によって総帥に独裁的な権力が与えられている。直接民主制は代表民
主制に似ているが、小さな町よりも大きな規模で見られる事は稀である。
最後に、いくつかの惑星世界は単純に無政府状態に置かれている。このカテゴリーが示すのは政府権限の完全な崩壊である。この状
態が惑星規模以上で最後に確認されたのは、簒奪者ステファン・アマリスから地球帝国を開放した星間連盟軍が、アマリスの治世に協
力した人物を政府組織から即時追放した時だった。この行為で専門的な公務員が地球帝国からいなくなり、国家は大王家が征服しやす
い状態に置かれた。現代における惑星規模の無政府状態は、戦争で荒廃した中心領域の世界か、辺境惑星で見られるのみである。