「事情」

落とした消しゴムがどこかすきまに吸い込まれていってそれは偶然ではない
湿ったガーゼのようなやさしさで乱暴な、
理由
というものをくるんで茶巾絞りにして和菓子のようにして盆の隅の方にちょんと置いて
きっとそれは灰のように舌の上でとけて甘味を残すのだろうそれを、
事情
と呼ぶことにして
これこれこういうそれで消しゴムが消えていったのでこれが消せないので
これこれこうなるのは仕方がないことなので得心願えないかという旨の手紙は出せないまま
そのまま
別れた。