なつみSTEP 
https://www.youtube.com/watch?v=H0SNJIgSB5M

 二分と言う短時間に、密度の濃い中身が詰め込まれている。複数回の視聴によって観た印象が変わっていき、同時に作品へとハマる。快作。

 細かく且つコミカルに描かれた背景の伏線への細かい言及は他に譲るとしよう。

 しかし何故、複数回を観る気にさせるかというと、圧倒的な楽しさがあるからだ。
 それは背景だけではない。物語中ぐりぐりと動く、なつみの喜怒哀楽が豊かで、見ていて自然と好感を感じさせる。
 BGMも慣れ親しんだ「線路は続く」のPOPバージョンで、ワクワク感を高める。

 特になつみの表情は出色で、中でもギコしぃカップルへの軽い羨望のようなジェラシーのような目線は、巧みだ。これはまたストーリーの伏線となっている点でも巧み。
 そして何故なつみの表情に焦点が当たるかと言うとモブをアスキーアートが担当しているからだろう。
 その記号的な表情は、なつみの人間的な表情と対になっていて、装飾過多に陥らせない。
 見せるところは見せ、他は単純化させるという手腕が遺憾なく発揮されていて、様々な伏線が入り組みながらも、複雑になりすぎない。その塩梅の心地よさ。

 こうして一挙手一投足を観ていく内に、なつみにすっかり好感を持ち、自分は彼女になら撲殺されてもいい、とまでは行かずとも。
 ひと時の作中の天国の体験が、心の暗がりを晴らしてくれたのならば、路を戻ることは出来なくとも、心に踏ん切りをつけさせてくれたのならば。と胸に迫る余韻に浸ってしまうのだった。
 萌え、というものに絶妙にアプローチした作品だと思う。
 狭い私見ながら、ここまでキャラクタの感情の動きに魅了されるFlashを、増して三分以内の短編なぞ、自分は他に知らない。