甲州武田家臣である小笠原慶安斎の屋敷に、武田軍諸将が集まり、話がはずんだ。
諸将の格からすると、談話会を仕切ったのは馬場信房だったようである。
「どのような武士が見込みある人物なのか」の話題から始まって色々な意見が出た。
逆に「どのような武士が忌避すべき欠陥人間なのか」についても意見を募り、まとめられた。
一、平気で嘘をつく
二、気に入らないからといって、屋敷内だろうが外だろうがかまわずに言い争いをしかける
三、親兄弟の仇を討たない
四、部下が喧嘩した場合、自分方に落ち度があるのに詫びもしない上司
五、一つの領地を共有している場合、自分だけ利益をむさぼる
六、武功ある人物を妬む
七、金もなく身分も低いのに、やたら色を好む
八、武具に金を使わず、他のことに金を使う
九、討論のとき、同意見が多ければ強引に主張するが、同意見が少なければ黙っている
十、知人が値打ち物と知らずに立派な品を持っていると、価値を教えずに横領する
十一、僧侶、町人、農民に無理難題を言う
十二、少しよいことをすると、まるで千人に一人しかできないかのように自慢する
十三、財産がある町人を狙って婿入りする
十四、妻に有力な縁者があるときは大事にするが、何かの事情で縁がなくなると粗略に扱う
十五、万事調子が良いときには威張っているが、落ち目になるとしおれてしまう
十六、功績がある者でも不運続きだと嘲笑い、臆病者でも運が良くていい暮らしをしているとやたらともちあげる

三、については時代文化の違いで現代に適用できず、
八、については実用の物に金を使うことと置き換える必要があるだろう
まあ全般として、室町末期でも自己愛性障害はダメ人間の見本になっていたようだ