1917. 1. 31

ドイツ、「無制限潜水艦戦」再開を宣言

 大戦は双方とも戦略的に手詰まり感が漂い、勝利への道筋が立てられない状況に
あった。

 ここで1916年12月22日に、ドイツ海軍潜水艦部隊の司令官であるヘニング・フォン・
ホルツェンドルフ提督はひとつの覚書を上呈した。
 その内容は以下の通りであった。

 現有の戦力で無制限潜水艦戦を再開すれば、イギリス商船団に対し月に60万トンの
損害を与えることができる。この数字はイギリスの造船能力を上回っており、その戦果を
半年間継続できれば、イギリス商船団は壊滅して、飢餓に陥ったイギリスは和を乞うで
あろう。
 仮に潜水艦戦の再開によってアメリカが参戦しても、半年の間にアメリカ軍が西部
戦線に現れることはない。ドイツは逃げ切れる。

 以上の提案は、ルーデンドルフを主とした軍部に好評をもって迎えられた。
 1917年1月のドイツ政軍首脳御前会議においてこの案は討議され、あくまでアメリカ
参戦を回避しようとする帝国宰相ベートマン・ホルヴェークの反対を押し切って、皇帝の
裁可を得た。

 ドイツ首脳陣は、西部戦線における兵力劣勢と迫りくる連合軍の攻勢の危機、
スカゲラク海戦後の海軍水上部隊の逼塞、連合軍の海上封鎖によってもたらされて
いる飢餓、こういった戦略的劣勢を打開するには、無制限潜水艦戦しかない、という
結論に達したのである。

 1月31日、皇帝は正式に、翌日をもって無制限潜水艦戦を再開する命令に署名した。
ベートマン・ホルヴェークはそれを見て、「ドイツは終わりだ」とつぶやいたという。