日米両政府は、弾道ミサイル防衛(BMD)態勢を共同で拡充し、通常より高い高度へ打ち上げる「ロフテッド軌道」でのミサイル発射に対処する方向で調整に入った。
北朝鮮が実施した五月のミサイル発射を重視。トランプ米大統領就任後初めてとなる日米外務・防衛担当閣僚の安全保障協議委員会(2プラス2)を七月十四日にもワシントンで開き、
主要議題とする考えだ。
政府関係者が二十五日明らかにした。

日本周辺の海上に展開するイージス艦増強のほか、イージス艦に搭載された迎撃ミサイル(SM3)や高性能レーダーを地上配備する「イージス・アショア」の自衛隊への導入を本格検討する。

防衛省によると、北朝鮮が五月十四日に発射した中長距離弾道ミサイルは約八百キロ飛行し、北海道・奥尻島から約四百五十キロの日本海に落下。
高度は過去最高の二千キロ超に達し、ロフテッド軌道で発射されたと推定されている。

ロフテッド軌道で打ち上げられた弾道ミサイルは、高速、急角度で落下するため迎撃が難しく、海上自衛隊や米軍のイージス艦の一隻ごとの防護範囲が狭まるのは避けられないとされる。
これまで防衛省は二、三隻で日本全土をほぼカバーできると説明してきたが、現状では十分に対応できない可能性があるという。

このため日米のイージス艦が共同で警戒監視や迎撃に当たる運用の強化を模索。防衛省はBMD対応のイージス艦四隻に加え、さらに四隻を新造や改修で整備し、八隻態勢の構築を急ぐ。

地上配備型のイージス・アショアは、イージス艦と比べ常時警戒態勢を取りやすい特性がある。防衛省は関連経費を二〇一八年度予算の概算要求で計上する方針。
2プラス2で米側に伝える見通しだ。稲田朋美防衛相はワシントン訪問前にハワイにあるイージス・アショアの実験施設を視察する計画を立てている。

日本のBMDはSM3が主力。日米は防護範囲が広く、命中精度も優れる改良型の「SM3ブロック2A」を共同開発中で、迎撃力向上を図る。


配信 2017年6月26日 朝刊
東京新聞 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017062602000137.html