国末憲人『テロリストの誕生』草思社
数年前にフランスで連続して起きたシャルリ襲撃事件・パリ同時多発テロ
トラックによるソフトターゲット攻撃の容疑者たちの生い立ちを追いながら、
いかに自爆・乱射・暴走テロリストが形成されるのかを追った一冊。
しょっぱなで著者は確率で言えばテロの犠牲者となるのは、交通事故・サメに食われる・落雷よりも低く、
「大したことであるが、大したことではない(本代に困って手放したのでうろ覚え)」と喝破する。
過激思想を持った若者がテロリスト、とりわけ自爆を選択するかシリアに行くのは結構なレアケースと言うことを
人間関係をたどりながら説いていく。元々貧困に苦しみ素行が悪い者も、
エリートコースにいけたのに挫折したものが流れ着いた例にせよ、近所にたまたま感化力のある過激派が拠点を構えていたり、
他の件でやらかして入った刑務所で、すでに収監されている過激派のカリスマに出会って矯正どころか悪化する、
積極的な兄弟に消極的なほうの兄弟が巻き込まれたりと、「悪い人間関係」がとどまることなく連鎖していって、
段々坂を転がり落ちるように死へ向かっていくのは、何とも恐ろしいもんだと思いましたね。
他にもフランス官憲による保護観察対象への監視が甘かった、たまたま見過ごされたなど
多くの原因と実行犯にとっての幸運が重ならないとテロは起きないのだと言う事を知れる点は本当に読んでよかったと思う。