香田元自衛艦隊司令官(海将)

 国産ミサイルの場合、航空自衛隊の現状は正確にはわかりませんが、実射できる数はせいぜい年間10〜20発でしょう。
また、国内開発ミサイルの改善型の開発や導入といったニュースも聞いたことはありません。これで実戦に耐え得る軍事装備になるでしょうか。
航空自衛隊が採用する国産の中距離空対空ミサイルAAM-4(99式空対空誘導弾)やAAM-5(04式空対空誘導弾)は、その性能は優れたものといわれています。
同時に、外国から引き合いがかからない背景には実戦経験、日本の場合は実射弾数の少なさ、特に失敗を通じて得られる実データの少なさからくる武器としての完成度、
すなわち実戦に耐えうる空対空ミサイルとしての評価が各国空軍の間で定着していない面もあると思います。

 赤外線誘導型の空対空ミサイルでは米国製サイドワインダーの究極発展型であるAIM9X、レーダー誘導型では
同じくAIM7シリーズの世代交代型である米国製のAMRAAM(AIM120)が人気です。
これはやはり潤沢な発射試験によるデータの蓄積を基にした高い完成度と、限られてはいますが実戦での使用実績により、「強い」とみられているからです。

 ひょっとしたら日本製のAAM-4の方が性能で優れているかもしれません。しかし、相手が電子妨害をしている環境、
あるいは雲や雨の中でも正確な誘導ができ、敵を撃墜できるのかという点での性能証明で、国産品は米国製に一歩譲るということでしょう。
こうした点は実戦、あるいは実戦に近い環境下での数多い試験発射を経験しないと磨くことができません。
 こうした事情を考えると、F-Xも日本だけでやる選択肢は適切ではないと考えます。日米同盟を前提として、
装備武器や、C4ISR*6の相互運用性を考えれば米国から購入する、もしくは米国と共同開発するのが現実解でしょう。

 共同開発するには、米国から評価される高い技術を日本が持っていることが前提になります。はたして、この点はどうでしょうか。
日本が優れる独自技術を生かしながら、米国から学ぶことを重視して、共同開発するのが良いのではないでしょうか。
これが日本にギリギリできることだと思います。

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