現在の日本では「軍隊(の存在自体)が悪い」とほざく人間も居ますが、これはドイツと違って「親衛隊、ナチ」と言った悪役(事実、この上なく悪なのですが)にぴったりの組織がなかったせいか、ドイツ国防軍と違い大日本帝国陸・海軍に非難が(もろに)集中がするのでしょう。まさに「糞味噌」とはこのことです。勿論、ドイツ国防軍の行った犯罪とアジアを占領した「皇軍」の犯した犯罪では、比べることなく「皇軍」が優位に立つことを言い添えねばなりません。そもそも、自らを「皇軍」などと称する組織に、元々未来など無かったのでしょうが…。悲しい限りです。

 今回、希少な絶版本を手に入れたことは、非常に幸運でありました(何と言っても、10年来の夢でした!)。それ以上に、キルストなる作家の真に迫れた気がします。興味深かったのは、訳者による「あとがき」が、「将軍たちの夜」の映画版評論に小生が書いたのと非常に似た内容であったことです。

つらつら思うに、最近目に付く日本の「右傾化」。日本人が忘れた(と、一般に言われる)誇りを、過去の栄光に見える「虚飾」の中に見出そうとする単純な思考過程。戦争の犠牲者を「英霊」と称し、彼らの死を本当に「無駄」にしていることを気付かない浅薄さ。このような時代であるからこそ、戦争小説を深く読み解いてゆくのも必要ではないでしょうか。