基本的に最高速度は真大気速度(TAS)で表記され、運用制限に関わる速度は計器速度(CAS)で表記されるのが国際標準
実はそれが分かれば零戦に対するイメージも変わるかも知れない

零戦は徹底的な軽量化のおかげで驚異的な運動性能と脆弱性を併せ持つ名機となったけど、それによる機動制限は有名

まず急降下制限速度が低い点だが、これは計器速度(CAS)基準なので例えば高度8,000mから降下した場合
7,000mに達した時点で実は速度が650km/hを超えたとしても全く問題が無い

何故なら高度7,000mでは実速度(TAS)650km/hは計器速度(CAS)459km/hで舵が重くなるだけの速度にすぎない
速度計が650km/hを指す実速度は何と898km/hとなる

また零戦はロールも速いが計器速度200kt(CAS370km/h)を超えるとロール速度の低下が大きくなり米軍機に逆転されてしまう
これは空戦がよく発生する高度20,000ftでは真大気速度(TAS)502km/hにもなる
これはF4Fなら発揮するのも難しくF6FやF4Uですら急旋回中に持続的に出せる速度ではない

なぜ米軍の鹵獲零戦のレポートで降下しながらブレイクを推奨し、F8Fの出現でやっと零戦とまともに戦える
と米パイロットに言わしめたのか見えてくるのではないと思う