遅れて発進した四番索敵線の利根四号機が、予定索敵線から北に150浬(約278キロ)もはずれた方角で、十隻の「敵らしきもの」を発見した。
〈「敵らしきもの一〇隻見ゆ。ミッドウェーよりの方位一〇度二四〇浬、針路一五〇度、速力二十ノット、〇四二八(注:午前4時28分、日本時間)」
南雲中将をはじめ司令部の人々は愕然とした。(中略)
「敵らしきもの十隻、とはなんだろう」
と、参謀たちは首をひねった〉(『ミッドウェー』より)
さらに約一時間後、粘り強く触接(しょくせつ)を続けた同機はついに「敵空母らしきもの」一隻の発見を報じてきた。この期におよんでなお、司令部では、
〈それでも、なお「らしき」ときているので、ほんとに空母がいるのかなあと、半信半疑の割り切れない思いを抱いている。〉
と、『ミッドウェー』には記されている。あたかも、甘利機の索敵報告に不備があり、それが司令部の判断を遅らせたと言わんばかりの書き方である。