慰安婦合意 なし崩しは賢慮欠く (朝日社説 11/22)

日本と韓国の両政府が協力して、被害女性達の名誉と尊厳を回復し心の傷を癒やす。 
それが慰安婦問題を巡る3年前の日韓合意の核心である。  文在寅政権は、その意味を見失っているのではないか。 
合意は破棄しないというが、なし崩しに「枯死」させるのは、賢慮に欠けると言う他は無い。

韓国政府はきのう、元慰安婦らを支援するために設けられた「和解・癒やし財団」の解散を進めると発表した。
日韓合意にもとづき、日本政府が10億円を拠出した組織である。
解散の明確な理由は示していない。 ただ、朴槿恵前政権が交わした合意には韓国内に強く反対する運動があり、文政権は合意の
手続きに問題があったとする見解を示していた。
財団を運営する理事の大半は昨年から辞表を出しており、もはや機能していなかった。
韓国政府にすれば、今回の決定は現実に照らしてやむを得ない措置ということかもしれない。

しかし実際には財団は成果をあげてきた。 元慰安婦への現金支給は、生存していた対象者の7割以上が受け取る意思を示した。
苦渋の思いに悩んだ人も多かったというが、財団が働きかけた意義は大きかった。
息長く癒やしの活動に取り組むはずだった組織を清算してしまえば、今後の救済をどうするのか。
その具体的な構想もないまま後退するならば、解決は遠のくばかりだ。

韓国政府は今後の行動計画を描くのが急務である。 支給分の余りや韓国政府が加えた予算を合わせ約15億円が残っている。
日本政府との意思疎通を十分に図り、合意の精神に沿う有効な活用を探らねばならない。
(続く)