ある日、いつものように座って通勤していると、見知らぬ1人の女性が
「すいません。妊娠しているので席を譲って下さい。」
と声をかけてきました。
心優しい俺は、何も考えることなくそのAという女性に席を譲りました。

ところが、同じことが毎朝、3日も4日も続いたのです。
Aはいつも、車内を見回して、俺を見つけては声をかけ、座席を譲るよう俺に要求してくるのです。
どうやらターゲットにされてしまったようです。
このサイトの用語を使うと「タゲられる」とか「粘着される」、「ロックオン」といったところでしょうか。

Aからすれば、声をかければ確実に譲ってくれる人がいて助かったと思っているのかもしれません。
いつしか、Aの思考回路は、
「俺に声をかければ確実に立ってくれる。」
から
「立たせる相手が俺でなければ嫌だ。」
に切り替わったようです。

しかし、毎回毎回立たされる立場の俺としては、初めの頃に持っていた親切心はみるみるしぼみ、
もはや避けたい存在としてAを見るようになりました。
「たまには違う人に声をかけろよ。」
これが、立たされたときの俺の気持ちです。

そこで俺は、Aとの遭遇を避けるため、いろんな方法を考えました。

(1) いつも乗るのとは違う車両のほうに乗り込んでみる。
 → Aは車両を移ってでも俺を探し出してきました。結局、俺は譲らされた。
(2) いつもの時間の電車を見送って1本遅い電車に乗る。(遅刻にはならない。)
 → なぜか車内にAが現れ、いつものように譲らされた。
(3) ためしに、わざと座らずに初めから立って過ごすことにする。
 → それでもAがズカズカやって来て、「席、ないのかよ!」と責め立ててきた。

(つづく)