つづき

声に寛容な図書館、社会で育む雰囲気作り

 オリックス生命保険(同)も今年の春から「#泣くのが仕事プロジェクト」を行っている。同社の特設サイト(http://www.orixlife.co.jp/pr/nakupro/)からスマホやパソコンに
「こどもは、泣くのが仕事です」などと書かれたイラストを自由にダウンロードし、ステッカーやバッジなどに利用できる。

 エキサイト社が2016年に子育て中の親を対象に行った調査では、公共の場所で赤ちゃんが泣きやまずに困った経験を持つ人は約7割に上った。
玉川大教授の大豆生田啓友おおまめうだひろともさん(保育学)は「困っている親に対し、直接声はかけられなくても、ステッカーなら思いを伝えやすい。日本人に合った優しさの示し方ではないか」と話す。

 子どもの声に寛容な公立図書館も登場している。今年3月にオープンした千葉市花見川区の「みずほハスの花図書館」では、親子や子どものためのフロアが、館内のおよそ3分の1を占める。

 通常の図書スペースとの間に壁はなく、小さい子どもの話し声や読み聞かせの声が館内に聞こえる。
市の担当者は「大泣きすれば廊下などに出てあやしてもらうことになるが、少々の音や声なら他の利用者に理解を得られるよう取り組んでいる」と話す。
2歳の長男と訪れた会社員男性(35)は「子どもの声を気にせず過ごせるのでありがたい」と笑顔を見せる。

 ただ、子どもの泣き声をどう受け止めるかは個人次第であり、正解はない。同図書館にも、これまで子どもの声に関する苦情が数件あったという。
大豆生田さんは「社会全体で子どもを育てるという雰囲気作りが大切だ。
こうしたキャンペーンや行政の取り組みは、多世代の人たちが触れ合う機会を増やすことにもつながる」と指摘している。(読売新聞生活部・志磨力)