書籍名: 「子供を殺してください」という親たち
著者名:押川剛

 これは表紙がずるい。ミスリードさせようとしている。こんな幼い子供の丸まった小さな背中を見たら、「子どもを殺したいとはなんて非情だ!鬼!悪魔!」という怒りが瞬時に湧いてくるに決まっている。
想像するのはネグレクトとか児童虐待とか、暴力に抑圧されている非力な存在の子どもの姿だ。

 でも読み始めると内容が全く違う。成長した子どもの暴力と殺意に怯える親や兄弟の姿がそこにはあった。

 不謹慎にも、殺してあげられるなら殺して差し上げたい、という気持ちすら芽生えてくる。
もちろんそんな犯罪行為は許されるわけはないのだが、我が子や肉親に命を狙われるという救いがたい状況下におかれたことがない者には、彼らの切迫感は想像もできないことだろう。