0107名無し名人
2017/12/13(水) 01:40:49.80ID:uJJYo+tj「歳はとりたくないものだ」 。
男は立ち止まって大きく背中を反らした。
男は朝から大山街道を歩き続けている。
定年退職後、男は独り身の寂しさを紛らわせるように昼間から酒を呑んでは、
ネット掲示板その他でたわいもないことを書き耽っていた。
しかし、数少ない知人に誘われて、最近は史跡を訪ねて旧道を巡ることもある。
今日は大山信仰の足跡を辿るように、大山街道を歩いている。
「思い返せば、何も良いことがなかった人生だった」。
最後に感動やときめきに心が興奮したのはいつだったか、男は思い出せない。
「残された時間にひとかけらの夢でも転がっていればいい」。
切なる願いを込めた大山詣。男は大山街道をゆく。