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意表の立ち上がりも

本局の展開を苦笑いを浮かべながら「全く予想していませんでした」と正直に語った表情は、あどけない中学生そのものだった。
 今期から本戦の持ち時間は3時間とたっぷりある。藤井は己の力で最善の応対を見つけて優位を築いた。開始二十数手で作戦家である深浦に「藤井さんに正確に指されて。序盤がひどかった」といわしめたのである。

第3図 http://originalnews.nico/wp-content/uploads/2017/12/1223_03.png

深浦が持ち前の底力を発揮

 深浦といえば強靱な二枚腰の棋風として知られる。どんなに苦しくなっても驚異的な粘りで最後まであきらめない。持ち前の底力を発揮して敗勢に近い将棋を何度もひっくり返してきた。
 苦しい第3図からの△4二歩▲3三歩△5二歩▲7七桂に△3一歩が深浦らしい根性の入った受け。歩は最も守備力が弱いが、歩の3連打で深浦玉が一気に寄らない格好になった。
 ▲7七桂で藤井は1手60秒の秒読みに。対して深浦はまだ50分近く残している。深浦が苦しいながらも耐え忍んでチャンスをうかがう展開に持ち込む。
 秒読みでも藤井は冷静沈着だった。ところが……。