割と最近のことだが、渡辺明さんと飲む機会があった。順位戦の昇級もほぼ決まり、
なかなかご機嫌だった。「最近は強い若手が大ぜい出てきて大変ですね」と私が言うと、
真顔で「えっ、誰のことですか」。私は次々と思いつくままに名前を挙げたのだが全然、
納得してくれない。渡辺さんにとって強いというのは10代でタイトルを取るくらいの人を指すようだ。

「今の棋士は自分も含めて、歴史的には森内と藤井の間、という位置づけになるんじゃないですかね」と
ニヒルに笑うのである。つまり、大山康晴、中原誠、谷川浩司、羽生善治、森内俊之、藤井聡太、という名棋士がいて、
その間の棋士。しかし永世称号を持ち、25日に王将のタイトルを獲得して二冠となった渡辺明をして、
そんな感じなんだなあと驚くとともに、藤井聡太という青年の器の大きさを今更ながら思い知る。