「なんだか城の中の雰囲気が悪いでおじゃる…」
「そっか〜?俺は何にも感じないぜ」
「失礼する。母より綿鍋殿あての託物がある」」
「おお殿様、なんか恒が永崎に留学するんだって?
「それが寝狸磨にとっての最善なら仕方あるまい」
「まあ、そうだよな〜。為政者はその観点で動くよな〜」
「母から…とよぴ君とゼンジー君の着物とのことじゃ」
「やった〜!」
「綿鍋殿…」
「ん?」
「綿鍋殿は一国の主として布人形と戯れるご自身をどう評価なさっておられるのか?」
「へ?」
「余の母も関わっているので心苦しいが、大の大人、しかも国主が少なくない金額をたかが人形の衣装のために税金から引き出すことに領民のコンセンサスは得られておるのか?」
「ア…うぅ…いや…」
「綿鍋殿が将棋の賞金で少なからぬ金額を国庫に返還していることは存じでおる。ただ、領民は将棋の強い綿鍋殿と切り離した、布人形で遊ぶのが趣味の殿様をどう受け入れておられるのか…それより何より、武士が人形と戯れていることにご自身で疑問は感じぬのか?」
「あうう…」

「彦〜、助けろ〜」
「どうしたでおじゃる?」
「あ〜あ、綿鍋殿も善魔の餌食に…」
「善魔?それは何でおじゃるか?」
「真恒殿を知る前の殿は、何をしても完璧すぎて全く悪を行わず規則を完全に守るけれど他人にも容赦がなくて、悪魔ならぬ善魔と呼ばれていたんです」
「そ〜なんだよ。もう人の痛い所ビシビシ最善手で突いてくるんだけど本人全く悪気ないんだよな。俺の布人形遊びに疑問呈されちゃって参ったぜ〜」
「それは常々麿も疑問に思っておったでおじゃるよ」
「あたしたち側近もアプレ真恒のまったりな殿に慣れちゃったから、昔に戻られてもやっていける自信がありません」
「やっぱ恒の留学無かったことにしないと寝狸磨だけじゃなく将棋連合にだって差し障り出るぜ」
「まぁ、善魔モードに入らないと心が守れないんでしょうけどね〜」
「どうしたものでおじゃるか…」