王子と貴公子〜後編〜

彼と会うたびにその細やかな気配りに感動する。いかにも騎士らしい凛々しく整った顔立ちなのに、人懐っこくて可愛らしい笑顔。
誰にでも優しく丁寧に接し、『同歩の参毎道』と呼ばれるほどの人当たりの良さと親しみやすさでファンから愛される存在でイベントにも解説にも引っ張りだこ。
まさに『貴公子』と呼ばれるに相応しい。それもただの貴公子ではなく、俺の好きな駒を巧みに操るからこその貴公子と呼ばれている。かっこええなぁ。そんな彼が今、俺の告白の返事をしようとしてくれている。

「腐女子や腐男子の皆さんはさ、俺とあいつのすごくいいストーリーを考えてくれるんだよね。『運命的で許嫁みたいな出会い』とか、『お似合いの幼馴染カップル』なんてさ。でも、現実は残酷なんだよね」
いつも通りの明るく爽やかな語り口だが、きっと本当は辛いはずだ。こうやって彼はいつも周りに気を遣う。そんなところも好きになった。
俺が何故告白するに至ったかを話したことでこんな辛いことを語らせてしまっているが、彼にとってはどんな答えを出すにしても必要なことなのだろう。しっかり受け止めよう。せめて、彼がどんな答えを出したとしても彼の辛さを和らげる存在でいられたら……。
「だってあいつ、女の子が好きなんだもん。いつも『ねぇタツ〜野木阪の黒石真衣さんにどうやったら会えるかな?彼女にしたい』なんてきいてくるんだよ。全然脈ナシだよね。才たろうくんの言う通りだよ。ほんとあいつ無邪気で、俺の気も知らないでさぁ……」
「参毎道くん……」