「それならせめてライバルとして高め合っていけたら、なんて思っていたけどそれもあいつ長背さんとライバルとしての絆がどんどん育っていってさ……俺、そんなときにもCクラスからなかなか抜け出せなくてほんと何やってるんだろって」
俺はずっと不思議だった。なんで俺にとってこんなにも眩い存在である彼はこんな謙虚過ぎるほど謙虚なのかと。その答えは彼とほぼ同門のみんなと仲良くしている場で彼を見ているうちに分かってきた。
参毎道くん、鷹見くん、ユーキくん、俺の四人で食事をしていた時のことだ。自然と隣り合わせて座る幼馴染みの二人、自然とユーキくんの世話を焼く参毎道くん、そんな二人を見た鷹見くんの一言。
「ユーキはさぁ、つきあうなら参毎道みたいな気が利いて世話好きで優しい人じゃないと無理だね。参毎道タイプ以外とは絶対続かないよ〜こんなにずっとユーキみたいな天然な子に優しくしてくれる人なかなかいないよ?」
「ん〜そうねぇタツにはほんと昔からよくしてもらってるね。ありがとうタツ!あ〜タツが女の子だったらよかったのになぁ」
この時、参毎道くんが一瞬泣きそうな表情になっていたのがずっと胸に焼きついている。それでも瞬時に笑顔に切り替えて明るく言った。
「いやいや〜そんなのもう長いつきあいだから今更だよ!こちらこそいつもありがとうねユーキ」
今にして思えば、鷹見くんは参毎道くんの気持ちに気づいていてなんとかユーキくんとの仲をアシストしようと試みていたのだろう。だが当のユーキくんの恋愛対象は女性で……きっと参毎道くんは長いこといつもこうして気持ちを否定され続けてきたんだ。そして、そのたびに周りのためにこうして無理して笑顔になってきたんやろなぁ……。誰が悪いわけでもない仕方のないこと。だけど、それが一番辛い。

運命としか思えないような巡り合わせで出会った幼馴染み、切磋琢磨して同じ夢を叶えて同じ世界でプロになった二人、幼稚園児の頃から今までかけて築いた揺るぎない絆。そんな絶好の舞台を用意されてきたのに、男同士というだけで伝えることも出来ないまま否定される恋……。
決して彼自身を否定されたわけではないのに、長年想い続けるうちにそう感じるようになっていったのは想像に難くない。