セルビオは勝利の笑みを浮べる。
 何故ならオレが発動したのはセルビオ・ガルシアの十八番のフェイント。
 この試合でもオレは4回使って、4回とも防がれていた。

“それなのに、いったい、何故また使うのだ?”
“通じない技をまた使うのは、何故?”

 観客席から見ている者は、誰もがそう思ったであろう。

 だが……そう思わせるのが、オレの作戦だった。

『終わりだ、コータ!』
「いや、違う……これがボクの……必殺技だ!」

 セルビオにボールを奪われる瞬間。
 オレは更なる連続技を発動させる。

“野呂コータ・スペシャルターン”

 これはオレが編み出したオリジナル必殺技。
 既存には無かった技であり、未来にも無かった技である。

 オレが今世の10年間のサッカー人生で編み出し、この大会中にようやく完成させた必殺技だった。
 試合で4回とも失敗していたのは、この最後に発動させるための布石だったのだ。

『今のは……』
「ヒョウマ君!」

 唖然とするセルビオを、オレは倒れ込みながら抜き去る。
そのままラストパスを出す。