午後6時くらいだろうか? 赤い夕日の角度が、それくらいだ。
 薄目を開けた先に、金髪がふわふわと揺れている。男の両手は私の肩口付近にある。 迂闊だった。華奢な体だと侮あなどった。このまま喉首を掻き切られれば、それまで。
 何の理由で殺されるのかわからないまま、私は再び目を閉じた。
「じいさん目を開けてくれよ。救急車呼んだほうがいいか? じいさんよぉ」
 金髪が泣きそうな声で私の肩を揺する。私は起き上がった。
「よかったぁ、生きてた。俺のじいちゃんがさ、脳卒中で倒れた時と同じだと思ったよ」
 よく見ると、金髪は泥だらけのスニーカーで我が家に上がりこんでいる。どうやら殺される危険はなさそうだ。
「どうして家の中に?」
「玄関のベル鳴らしても出てこないしさ。庭にまわってみたら、寝ているみたいだったんで声かけたんだ、何度も何度も。でも返事がないから……」
「で、扉を壊して?」
「いや、開いてたから……」
「開いていた?」
「それよりさぁ。弓絵が居なくなったんだよ。俺どうしたらいいんだよぉ」
 こっちは膝立ちになった。こうなれば、いつでも相手を押さえ込める。
「ゆっくり話を聞こうじゃないか。まず……電話に仕掛けた盗聴器の話からな……」