とある田舎にある、人里離れた山奥の古い一軒家で、物騒なことが起きていた。その家で独り暮らしをしているワイことぷぅぎゃあああは、突然部屋に侵入してきた屈強な大男に襲われたのである。
大男が振るう殺人的な暴力をしこたま受けたぶぅぎゃあああは、顔中血塗れになりながらも、どうにか相手に抱いた疑問を投げ掛けた。
「ど、どうしてワイにこんなことをする! ワイが君に何かしたのか! ワイを襲う理由を答えるがよい!」
「悪く思うな。これも仕事だ」
「し、仕事ということは、君は殺し屋の類いか! いったい誰に頼まれたのだ! 依頼主の名を答えるがよい!」
「本来ならばそんな質問には答える義理もないが、まあいい、冥土の土産に教えてやろう。依頼主は、設定さんだ。彼はうちのお得意様でな。金払いの良い上客だ」
「なんだって、設定が依頼したのか! だ、だったら、ワイが設定よりも高い金で君を雇おうではないか! ワイにはBMWのZ4に乗ってるような弟子も居るので、金ならいくらでも用意出来るのである! だから、君もワイに従うがよい!」
「残念だが、お前の弟子はもうこの世にいない。 俺がすでに全員始末したからな。そういえば、そのZ4とやらの持ち主の男は、くだらない遺言を残していたな。
俺が死んだら、親友のリーマンくんにこの車を渡してくれ、だとさ。なんとも泣かせる友情話だが、俺はそんなお人好しではないのでね、Z4は燃やして、スクラップにしたよ」
「な、なんだって! 君には人情というものが欠片も無いのか! 恥を知るがよい!」
「言いたいことは、それだけか? だったらそろそろ終わりにさせて貰うぞ。俺の仕事はこの後も色々と詰まっているのでな」
大男はそう言うと、血塗れでうろたえながら必死に後退りをするワイに対して、ジリジリと距離を詰めていった。
「何か遺言はあるか? あるなら一応聞いておいてやるぞ」
大男がクールなポーカーフェイスで訊ねてきた最後の問いに、ワイは覚悟を決めたのか、ボソボソと何かを呟いた。その直後に大男の強烈な踵落としが、ワイの脳天に突きささり、頭蓋骨が砕ける鈍い音が辺りに響いた。

「頼んでいた仕事は全て終わったみたいだねw ご苦労さんw じゃあ、これは約束の報酬のランボルギーニアヴェンタドールのキーなw 車はガレージにあるから、乗って帰っていいよw 名義変更は、後でよろしくなw」
「いつもありがとうございます、設定さん。ところで、ワイとやらの遺言を聞いたんですが、興味ありますか? あるなら、教えますが」
ワイやワイの弟子を始末し終えた大男は、依頼主である設定氏の豪邸の広いリビングで、彼にそう訊ねる。
「あのアホの遺言かw どんなのだか、ちょっと興味あるよねw で、なんて言ってたの?」
設定氏は、豪華で高級なソファーにどかりと座りながら、ニヤニヤして大男の答えを待った。
「ワイは、たしかにウソを付いたけど、殺さなくてもよいではないか! 自称プロが、そんなに悪いのか! 設定こそ、誰かに殺されるがよい! ワイの考え! だそうです」
「マジかwww アホのワイらしくて、クソワロタwww じゃあ、またなんかあったらよろしくね、岩ちゃんw」
「了解しました。いつでもお呼びください。では、今日はこれで、失礼します」
岩ちゃんと呼ばれた大男は、設定氏の所有する超高級車がところ狭しと並んだガレージに入ると、黒いランボルギーニアヴェンタドールを選んで乗り込んだ。
今日から、これが俺の愛車か、と思ったのかどうかは定かではないが、いつでも冷静な大男、岩のポーカーフェイスが、若干緩んだように見えた。

完。