「今時不貞に男も女もないの。男の不貞も不貞であることに変わりはないの」

「そうか。なら俺は、お前を殺す」

 突然の言葉に少し驚いたが、だからと言って泣いて詫びるものでもない。
 だからどうしたんだ。舐めるなよ。私はそう思った。瞬時に状況を判断した。
 そして、わざと少し間を置いて動揺した振りをすることを忘れずに行った。私は言った。

「ふうん。どうするつもりなの?」

「俺は銃を持っているが、それは使わない。俺は喧嘩だって強い。腋を締めて真っ直ぐ腕を突
き出す。眉間か蟀谷(こめかみ)を狙う。女相手でも俺は容赦をしない」
 私は大畑がそう言い終わるか言い終わらない内に、大畑の脛を思い切り蹴り上げた。大畑は
呻き声一つ上げなかった。
 そのまま躊躇わず急所を蹴り上げる。
 初めてうっ、と呻って、大畑は倒れた。

 ええと、大畑は私の彼氏だ。でもこうなったら仕方がない。

 私は男の尻ポケットからリボルバーを取り出し、頭を六回撃った。どこを撃っても死ぬんだ
から、深く考えなかった。穴から血が吹き出した。
 弾はなくなり、男は死んだ。

「喧嘩が強い自慢なんかしたら負けフラグが立っちゃうわよね」

 そう、呟いた。


 暴力や殺人に、男も女もない。今はそういう時代なのだ。


 死体の処理を淡々と済ませて、私は東京に帰った。もう二度とS県には来ないだろう。
 さようなら、私の彼氏。次はもっと格好いい名前の彼氏がいいな。
 頭がよいと、もっといいのだけれど。