「年越し大人食堂2021」では、温かい手作り弁当が提供された=東京都千代田区の聖イグナチオ教会で2021年1月1日、國枝すみれ撮影

 新型コロナウイルスの感染が拡大してから初めての正月がきた。1日、東京都千代田区にある聖イグナチオ教会で、「年越し大人食堂2021」が開かれ、生活に困窮した人のための弁当配布や生活相談などが実施された。並んだ列の中には若い女性、家族連れ、外国人の姿があった。主催団体は「自助、共助は限界に来ており、今こそ公助の出番。政府は生活に困窮する人が路上にあふれることを阻止してほしい」と訴える。訪れた人たちの声に耳を傾けた。【國枝すみれ、塩田彩/統合デジタル取材センター】

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 ◇弁当配布の列に女性の姿も

 今回提供された食事は弁当やスープで、希望者には衣類も配布した。また、専門スタッフを置いて労働問題や生活の相談を受け付けた。

 女児を抱いた若い女性に声をかけた。34歳の大学院生で女児は3歳。「こういう所にくるのは初めて。医薬品と子ども服をいただけないかと思って」。コロナ感染拡大でアルバイトができなくなり収入が減った。奨学金の返済がコロナで一時的に猶予されたのがせめてもの救いだという。

 「コロナ禍で宴会が激減して12月は収入がほとんどなかった」。派遣コンパニオンなどとして働いてきた女性(44)は去年3月ごろから仕事が激減した。例年なら年末年始の宴会で月約60万〜70万円を稼いでいた。手元の預貯金は残り十数万円になり、健康保険料を数カ月分滞納したという。「この状態があと1、2カ月続けば、本当に住む場所もなくなってしまう」

 弁当を配る列には、路上生活者の中年男性に交じり、赤ちゃんを抱いた女性や家族連れの姿があった。リーマン・ショック後、2008年から09年にかけて「年越し派遣村」が開かれたが、その際はほとんどが男性だったのに……。
差があり
 この弁当は、料理研究家の枝元なほみさんが調理を担当した。当初は200人分を用意したが2時間ほどで配り終えたため、追加で作って午後4時半までに約300個が配られた。だがコロナ対策のためテークアウトで、弁当をもらった人は会場近くの土手に設置された椅子に座って食べていた。1日は晴天で日差しが暖かかったから、本当によかった。