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【ときメモ】ときめきメモリアルSS総合スレ
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0001名無しくん、、、好きです。。。
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2010/04/06(火) 20:03:17ID:5DqS8Q41
思いをぶちまけろ!
エロネタはエロパロで。
0370名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 21:05:34.58ID:FgK6/bM/
藤崎詩織 35歳 第4話 Bパート

 二人の胡散臭い人間に案内されたのは、これもまた寂れた感じのバーであった。
詩織が追い出されたスナックと良い勝負というくらい場末感が漂っているが、「何か」が違う。
「ごめんね、店の中だとちょっと目立つし、貴方には似合わないから、奥の方に上がってちょうだい」
 奥の方に通されたが最後、そこがヤクザの事務所で詩織は脅迫されて……ということも考えられたが、色々と疲れていた詩織は、とにかく一息つきたくて仕方なかった。
 言われるがまま、店の奥の休憩室のような場所に行くと、そこには一人、先客がいた。

「あ、この子も貴方と同じで、ちょっと事情あって、うちでかくまっているのよ。今、飲み物持ってきてあげるから、座って話でもしていて」
 「人間」はそう言うと、店の方へと戻っていった。
 先客は、よく見ると、金髪ストレートで整った顔立ちをしている。相当の美人顔である。
悪い男にでも騙されて、借金取りにでも追われるはめになったのだろうか。ああ、やっぱり美人って不幸なんだわと、詩織は自分の顔に手を当て、ため息をついた。

「こんばんは。レイといいます。今、わけあって、この店で働きながら、かくまってもらっているんです。」
「そうだったの……私は詩織、よろしくね。ホント、美人ってろくな目にあわないわね……貴方もきっと辛かったでしょう?」
 まだ何の理由でこの店にかくまわれているのかさえ分からないのに、詩織は勝手に予想して、はらはらと涙を流しながら、レイの手をとった。
「美人だなんて、そんな……。ところで、貴方は?どうしたの?何かパーティに出るような服装をしているけど……」
「私が嫌だって言っているのに、しつこくつきまとってくる男がいたの。ホント、しつこくて……」
 詩織は、もっともらしいような、そうでもないような嘘をつき、上着を脱いだ。
 上着のポケットから、一枚、名刺が落ちる。

「藤崎……詩織……?貴方、もしかして!きらめき高校○○年度卒業生の、藤崎詩織さん?」
0371名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 21:19:41.41ID:FgK6/bM/
藤崎詩織 35歳 Cパート

 いささかの疑問はあった。だが、「女性なら私をライバルとして意識しているはず」と勝手に納得した詩織は、深くうなづきながら答えた。
「そうよ、私が『あの』藤崎詩織よ」
「そうなんだ!藤崎さん、本当に奇遇ね!貴方とこんなところで会えるなんて!私よ!伊集院レイ!忘れた?」
「え?」
 思考が停止する。伊集院レイ……確かに高校在学時には毎日のように聞いたはずの名前である。
だが、伊集院レイは男性。今自分の目の前にいるのは女性。これは一体どういうことなのか?
 詩織の頭の上にいくつもの「?」が浮かび上がる。そんな様子を見たレイは、しまったと思いながらも暴露する。

「そうよね、藤崎さんは知らないわよね。私、実は女なの。男としての私しか見ていないから驚くのも無理はないわね」
 詩織はまだ理解できない。この女は一体何を言っているのか?
 そんな時だった。詩織を助け、店まで案内した「人間」が、飲み物やつまみを用意して戻ってきた。
「あらあら、レイちゃん、ずいぶん今日はテンション高いじゃない?何か良いことがあった?」
「この子、高校時代の同級生なんです!あまりにも偶然で嬉しくて!」
「あらまあ、それはすばらしい奇跡だわ!つもる話もあるでしょうから、今日はここに泊まっていきなさいよ。お布団も用意してあげるから」
0372名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 21:24:43.75ID:FgK6/bM/
 完全に固まっている詩織をよそに、二人は盛り上がっている。詩織はなんとか意識を保ちながら、禁断の扉をノックした。
「あのー……ここって、何のお店なの?」
「あらまあ、分からなかった?ここ、オカマバーよ……」
「うっ……」
 レイを見る詩織の目は冷たい。完全な誤解なのだが、今は詩織の頭の中で別の真実が作られていた。
「藤崎さん?」
「いや!!私知らない!こんなオカマ!知らない知らない!人違いです!帰ります!きもいわ!」
「藤崎さん、酷いよ……私、女だよ?」
「ちょっとアンタ!きもいだなんて、そんなこと言うことないじゃない!なんていう子なの!」
「近寄らないでオカマ!不潔!きもい!それ以上近寄ったら本当に警察呼びます!帰ります!追ってこないで!」
 詩織は逃げるように店から出て行った。伊集院レイが何故ここにいるかという重大な話を聞かないまま。そして、それは後に新たな悲劇を生むこととなった。

(つづく)
0373名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 22:05:25.14ID:FgK6/bM/
藤崎詩織 35歳 第5話

 結局詩織はビジネスホテルに泊まり、翌日直接職場に向かった。
職場に着くと、いつもは半数以上がまだ出勤していないのに、今日に限ってほぼ全員が出勤していた。
詩織の上司は詩織を見かけると、血相を変えて「どうしたんだ!全然連絡がつかなくて大変だったんだぞ!」と怒鳴ったのである。
 「何でしょうか?」詩織は昨日悲惨な目にあったこともあり、ぶっきらぼうに尋ねた。
「何でしょうかじゃないよ。お前、ニュース見ていないのか?」
 確かに昨日は色々ありすぎてニュースなんか見ていなかった。そんなに重大なニュースがあったというのだろうか。
「状況がわからんまま電話に出られても困る。お前はまず休憩室でニュースを見て来い。そして動きがあったら逐一報告しろ!」
 上司はそう言うと、一刻を争うというような慌てぶりで、秘書課室に戻って行った。

 詩織が休憩室のテレビをつける。皆が働いているというのに、重役のような待遇である。
 テレビをつけると、片目が前髪で隠れるような髪型をした女性の学者が、報道陣に囲まれている。
『博士!RMY細胞で世界のあらゆる病気を治せるというのは嘘だったのでしょうか?』
『RMY細胞を使って、エイズ患者を完治したというのは嘘だったのでしょうか?』
『RMY細胞は実は人類滅亡計画に利用する細菌兵器だという噂がありますが、本当なのでしょうか?』
『博士!答えて下さい!RMY細胞を北の楽園に売っているというのは本当なんですか?答えて下さい!』
 博士と呼ばれている女性は、つい先日までテレビで話題の中心にいた科学者である。
 RMY細胞という特殊な細胞を培養することに成功し、ノーベル賞の最有力候補とも言われ、百年に一人の天才とまで評されていた。
0374名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 22:16:33.52ID:FgK6/bM/
「痛い!痛い!離しなさい!離しなさい!」
 博士は大勢の記者に押しくらまんじゅうのように詰め寄られて、悲痛な叫び声をあげる。
 しかし、記者は決して容赦しようとしない。我先にと、博士に詰め寄って質問を浴びせる。
『博士!博士の研究のスポンサーは確かあの伊集院グループですよね?この件も伊集院グループが関与しているのでしょうか?』
『伊集院グループの株価が軒並み暴落していますが、この件について何かコメントを下さい!』
『博士!逃げないで答えて下さい!』

藤崎詩織 35歳 第5話 Bパート

 つまり、こういうことである。
 日本有数の大企業である伊集院グループがスポンサーとなっている博士の研究が、実は病気治療のためのものではなく、世界征服のためのものではないかという見方が強くなった。
その影響により、伊集院グループの株価は一気に大暴落。「北の楽園」とのつながりも疑われているせいで、今や世間は伊集院家を外患誘致の悪の手先として見るようになったのである。
 そして、その影響は伊集院グループだけに限らない。伊集院グループと強固なつながりを持っていた企業も、その影響を強く受けているのである。
 無論、詩織が勤めている企業もそのうちの一つであり、朝から株価は急降下。苦情や問い合わせの電話が鳴りっぱなしである。
0375名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 22:27:27.13ID:FgK6/bM/
 確かに、渦中にいる「博士」には黒い噂もあった。
 だが、それらは、今までは博士に及ばない能力の科学者たちによる妬みだとしか捉えられていなかった。
しかし、今回は、きわめて機密性の高い情報が漏れたことにより、博士の研究の暗黒面が、高い信憑性をもって浮き彫りにされたのである。
 あの伊集院家がと、首を傾げたくなるような、お粗末な情報漏えい。
 一説には内部の犯行ではないかと言われているものの、誰の仕業なのか分からなかった。
事件勃発前後から所在不明となっていた伊集院家の長女や次女の仕業なのではないかという噂もあった。

『ここで番組の途中ですが、緊急の情報が入りました。』
 一大事件の報道中だというのに、それを上回る緊急ニュース。一体何事か。詩織も食い入るようにテレビを見る。
『先ほど入った情報によると、暴落した伊集院グループの株を、何者かが買い占めているとのこと。繰り返します……』
 詩織は上司に言われた言葉を思い出し、急いで上司を呼びに行く。
こんな時でも上司の言葉は絶対。エリートとはいえ、いや、エリートだからこその悲しい性でもある。
 事態はまた、新たな局面を迎えようとしていた!
0376名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 23:27:47.46ID:FgK6/bM/
藤崎詩織 35歳 第6話

 今や価値が暴落して誰もが見向きさえしなくなった伊集院グループの株。
それを買い占めている者がいるという。一体何のために?
 誰もが疑問に思うところだが、不思議なくらい、その後のニュースは「博士」の研究のことばかりであった。
 しかし、いずれにせよ、この事件で失ったものはあまりにも大きすぎた。

 詩織の会社では、即日、緊急の役員会議が開かれ、依願退職者を大量に募集された。
 職を失うこと、そして、今の一流企業の正社員としての地位を失うことは大きいものの、誰もがこの沈み行く泥舟に残る気はなかった。
会社から代償として支払われる退職金の額が目減りしないうちにと、我先にと退職していく。
 それでいいのかもしれない。なぜならば彼らはエリートだから。彼らの能力をもってすれば、今の会社ほどではないにしろ、職に困ることは考えられなかった。
 そして、詩織も同じ考えだった。沈み行くこのタイタニック号に、いつまでも残っている気はなかったのである。
0377名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 23:32:42.45ID:FgK6/bM/
 本社ビルに一礼。颯爽と立ち去る。感慨も何もなかった。
 美樹原愛はこれを機に、しばらく専業主婦として暮らすということで、婚約者と話し合いがついたらしい。
詩織は、そんな美樹原の行為を、「坂道から転がり落ちるような転落人生」と一笑し、自分はそうはならないと心に誓った。
 だが、明日からは、社会的には無職である。早く新たな職を見つけなければ、自分は負け組だ。
ただ、ハローワークに行くようなことだけは絶対にしないと決めていた。あそこは社会の負け犬が職を求めておしかけるような場所だ。自分の行く場所ではない。
それに新聞や雑誌に載っているような、安っぽい求職に応じることもしないと決めていた。自分にはもっとふさわしい場所がある。
 さて、どうしようか……悩んでいた詩織は思わず母校の一流大学に立ち寄る。
 そこには、一流大学生にしか声がかからないような企業の求人情報もあるのである。
詩織の目の前に大きなポスターが目に入った。

「新規開業 副社長をはじめ、幹部候補募集 〜私たちは女性の美を徹底的に追求する会社です〜」
 これしかない! 詩織は早速、社会人経験者を募集していないか問い合わせた。返事は「経験者の方は特に歓迎します」であった。
0378名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 23:43:29.00ID:FgK6/bM/
藤崎詩織 35歳 Bパート

 鏡魅羅35歳……かつて、容姿のせいで酷い失恋を経験し、一時期は男性不信のようになった。
幼い兄弟を抱えながら貧しい生活を送り、それを悟られないように、気高く振舞うことに必死だった。
だが、高校時代に出会った、とある男性との交流をきっかけとして、彼女は本来の自分を取り戻すのであった。
 高校卒業後、その美貌を生かし、モデルとして活躍。生活は見違えるほど改善された。
だが、女性が美を保てる時間は短く、そして維持するのには多大な労力を要することを、彼女は一番わかっていた。
ずるずると三枚目のおばかタレントして生き残る道を捨て、モデルとして旬が切れないうちに、惜しまれながら引退。
 その後は、有名な化粧品会社やアパレル系の会社に入って、経営のノウハウを学びながら、弟たちを進学させた。
 一家の長としての役割を終えた彼女は、今までの自分の人生経験を生かすため、自分の蓄えと人脈、そして立派になった弟たちからの援助をもとに、会社を立ち上げたのである。
その名も、「株式会社ミラーデス・コーポレション」である。
 化粧品や服飾品、エステ、美容院、健康食品など、女性の美に関する事業について手広く扱う会社である。
0379名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/23(土) 23:50:54.98ID:FgK6/bM/
 学生時代の彼女の成績は壊滅的ともいうべきものであったが、それも日々の生活に追われて勉強どころでなかったことが大きい。
決して彼女自身が頭が悪いわけではなかったのである。そして苦労人でもあった彼女は実に人身掌握術や交渉術に長けていた。
だからこそ、経営者としては申し分なかったものの、いかんせん、法や経済の専門知識となると話は別だったのである。
 副社長候補をはじめ、幹部候補生の大々的募集。
 彼女は情に流されない部分もあったため、決して自分の弟や親戚縁者を役員に取り入れるようなことは考えなかった。
むしろ、自分の人生とは違う道を歩んできた賢者を手広く募集し、場合によっては三顧の礼を尽くして迎え入れる覚悟だったのである。

「社長、三次面接の合格者が決まりました。こちらの5名です」
「ありがとう……下がっていいわよ……あら?これは……」
「藤崎さん……」
 鏡は何かを決心したように、窓の外を見た。窓には夕日に反射して、「美しい私の顔」が映ってた。
0380名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 00:13:40.26ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第7話

「藤崎詩織です。よろしくお願いします」
「どうぞ、おかけ下さい」
 詩織の最終面接が始まった。試験官は社長である鏡魅羅と、外部から詔勅した人材派遣会社役員などの試験官総勢7名である。
 外部試験官からの質問に、詩織は淀みなく、そしてスマートに答えていく。
 筆記試験はトップ通過。経歴も申し分ない。まさに将来の幹部候補としては申し分ない人材であった。
ただ一つ、履歴書に貼ってある写真がずいぶん昔のものではないかと思うほど違っていた一点を除いて。
 ちなみにこの点については、わざわざブサイクな替え玉を用意して望む人間はいないだろうとのことで、難なきを得た。

(この調子、この調子、バッチリだわ!(電球3つ点灯)……この調子でいけば合格間違いなし)
(あと、残すは中央の社長だけだわ。ここが肝心。ここで社長に気に入ってもらえれば私も晴れて副社長候補よ!)
「さて……藤崎詩織さん……」
「はい」
 ついに魅羅が詩織に問いかけた。どんな質問が来るのだろうか?
「弊社社長の鏡魅羅と申します……お久しぶりね、高校時代以来かしら……懐かしいわ」
「え…………」

 詩織の中で電撃が走った。鏡魅羅……そんな名前の人間、この日本に2人といない。
そして、高校時代は、自分と鏡、それとあと一人誰だったか思い出せないが、とにかくその3人で男子生徒の人気を3分していた。
まさにきらめき高校内三国志状態であった。あと一人の名前はにわかに思い出せないものの、鏡の名前は特に覚えていた。
「あら……忘れちゃったかしら……確かにあれからもう20年近く経っているのですし、無理もないわね……」
「……す、すみません……」
 鏡魅羅は、仕事に私情をはさまなかった。そのことは弟たちを役員に取り立てていないことからも明白だった。
しかし、鏡は、かつてのライバルが今職に困っているということ、そして、その原因が有名な紐緒博士・伊集院グループの一連の事件のせいだとわかっていた。
 だから、今回に限っては、詩織が他の試験官の眼鏡にかなう限りは、自分は何も試さずに副社長として取り立てるつもりであったのだ。
同情ではない。詩織の能力を認めたうえでの決断でもある。
 しかし、それを許さない者が一人いたのである。詩織だ。
0381名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 01:21:06.51ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第7話 Bパート

 詩織の中では、ここで無難にやり過ごせば合格できるだろうという算段はあった。
 しかし、そのことは、自分が、あの鏡魅羅の部下として働くということをも意味していた。
 新設会社とはいえ、資本金は潤沢で、過去の有名モデル鏡魅羅の会社ということで、事業が軌道にのるのは難しくもなかった。
今、ここで、鏡の部下という地位を甘んじて受け入れれば、自分には副社長としての椅子を与えられるだろう。
 だが、それはどうしても許せなかった。自分があの鏡魅羅より下であってはいけないのだ。
 常に成績表の左上の最上段付近にいた自分が、右下の最下段付近を争っていた鏡より下のはずがないのだ。

「どうしたの?藤崎さん?具合が悪い?トイレだったら遠慮しないで言ってね」
「……知っています……」
「え?」
「知っています、鏡さんのこと。覚えています」
「あ、思い出してくれたのね!それじゃ話は早いわ、私もできれば知っている人の方が……」
「知っていますよ、いつも赤点とって補習受けていた鏡さん」
「え?……い、いやねー、そんなことわざわざここで……」
「意味不明なことを言って、成績悪いのを開き直っていた鏡さんですよね?覚えています」
「っ………」

会場がざわめく……ざわざわ……
「無礼な!」「社長に失礼だぞ!」「いくら元同級生でも礼儀があるだろう!」
試験官たちはいっせいに非難する。しばし、鏡と詩織がにらみ合う形で対峙する。
「藤崎さん、せっかく応募していただいたのですが、貴方はどうやら弊社の社風に……」
「わかっています!私もこの程度の待遇に満足する安い女じゃないですから!」

 詩織は試験官たちの怒号を背に浴びながら退席した。
せっかくのチャンスをふいにしてしまった。そして今後、鏡と再会してもその関係修復はまず不可能だろう。
でもいいのだ。詩織のプライドがそれで守られたのだから。
 詩織は颯爽と立ち去った……。
0382名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 01:50:40.58ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第8話

 ちゃらららららーん、ちゃららららーん
「ありがとうございました!」
 ポニーテールの元気な店員が元気良く詩織を見送った。
詩織は近所のコンビニで、ポテチといちご1パックを買って帰路についた。
会計の際に、限定いちごTシャツとプロレス観戦チケットも勧められたが、丁重に断った。

「ふぅ……嫌な一日だったわ」
 今日はある意味最悪な一日だった。今まで明らかに勝ち組に属していた自分が、なぜか負けている感じがしてならなかったのである。
そのため、詩織は、目の前の信号が赤になったままだということに気づかないでいた。
「おいこら!あぶねえだろうが!!」
 横断歩道を渡ろうとする寸前で、何者かに止められる。

「ばいばーい、みどりのおばちゃん!」
「気をつけて帰るのよ」
 すぐ近くで、学校帰りの小学生たちが、「みどりのおばちゃん」に元気に挨拶して行った。
 そして、詩織を止めているのもまた、みどりのおばちゃんである。
「おい、あんたなあ、子供も見ているんだよ!交通ルールくらい守れよ!」
 詩織を止めている方のみどりのおばちゃんは、かなり気の強いタイプのようであり、言葉遣いもまるで男だ。
みどりのおばちゃんというよりは、婦人警官、いや、自衛隊員と言った方がふさわしいような感じの迫力である。
「望ちゃん、落ち着いて落ち着いて、その人もついうっかりしただけかもしれないから」
「だから未緒は甘いって言っているんだよ!いいか?轢かれてからだと遅いんだぞ!命は一つしかねえんだ!」
0383名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 02:07:25.63ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第8話 Bパート

 二人のみどりのおばちゃんが口論?をしている時も、詩織はどこかうつろである。
二人が今、何を話しているのかさえ、耳に入ってこない。
「おい、あんたなあ、聞いているのかよ?」
「え?」
 詩織は「何のこと?」と言わんばかりの反応を示し、目の前の信号が青になったこともあって、二人を無視して歩き出そうとした。
「おい、無視するなよ!」
「望ちゃん、もうその辺にし……あっ……」
「おい、未緒!未緒!大丈夫か?また貧血か?ちくしょう!あんなに無理するなって言っただろうが!」
「大丈夫よ、それより、あの人、心配だわ。何か心ここにあらずといった感じだったし」
「ああ……なんか様子がおかしいっていえばおかしかったな」
「望ちゃん、ここ、お願いね」
「おい、ちょっと!!」

 病弱な方のみどりのおばちゃんが、信号をちょうど渡りきった詩織に追いつく。
呼び止めようとしても全く無視して歩いていく詩織の肩にようやく手が届いた。
「え?何?まだ何か用なの?」
「いいえ、貴方、何か悩み事がありそうで、心配だったから。さっきも赤信号で飛び出そうとしていたし」
「別に……大丈夫ですから」
「あの……」
「何?」
「良かったら、お家までご一緒しますよ。その方が安全だと思うし……」

 病弱な方のみどりのおばちゃんは、自分の健康状態もあまり良くないはずなのに、詩織を心配して同伴を申し出た。
だが、詩織は、そんなみどりのおばちゃんを突き放すように、こう言った。
「一緒に帰って、変な噂とかされると恥ずかしいですから。じゃ……」
 一生懸命走って追いつこうとしたせいで、病弱なみどりのおばちゃんの息はあがっていた。
病弱なみどりのおばちゃんは、詩織の返事を聞くと、ショックだったのか、その場に座り込んでしまった。
詩織は、そんなみどりのおばちゃんを気にもとめず、帰路へとつくのであった。
0384名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 02:23:48.06ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第9話

 詩織にとって最悪の朝がやってきた。今までの人生の中で、一度たりとも負け組に属していたことはなかった。
今朝、負け組としての最初の朝を迎えたのである。藤崎詩織35歳・独身・無職、負け組。それが今の詩織である。
 今日もまた、母校の一流大学の就職情報コーナーに行こうと気合を入れていた。
 詩織が、駅に向かって歩いていた時であった。

「帰って下さい!私、何度言われても、この土地は売る気はないんです!」
「奥さん、他の皆はもう納得して売ってくれているんだよ?奥さんだけだよ、俺らを困らせているのは」
「俺らにもノルマがあるんだよなあ。奥さんがウンって言ってくれないと、俺らも上からヤキ入れられるんだよ」
「どうせこの食堂だって儲かっていないんだろう?こんな食堂、潰れてしまったら、何も残らないんだぜ?」
 食堂の前で、店主と思われる女性と、柄の悪い大男3人が対峙している。
 男たちは極めて体格ががっちりしており、派手なスーツを着ている。見るからに「ヤ」の人たちである。

「そうそう、もしかしたら、火事とか起きちゃうかもしれないよ?そうなりゃ、こんな店、丸焦げだなあ」
「火事が起きなくても、ブルトーザーが事故を起こして突っ込んできても大変だ。お客さんも無事ではすまないかもなあ」
「人の噂って怖いからな。昔、ネズミの肉が入っていると噂されたハンバーグ屋も潰れたしなあ。噂は怖いよな、な、お前ら」
「あんたたち……脅しているのね、私を」
「おいおい、人聞きの悪いことを言うなよ。俺たちは忠告してあげているだけだよ?」
「そもそも奥さん、もし、もしもだよ、俺らが言ったようなことが起きたら、どうやってこの店守るんだい?」
「……根性で守ってみせるわ……」
「がははははは!おい、また根性だってよ!」
「古いんだよな、奥さん。根性で食っていけたら、誰も苦労しねえよ」
「さて、奥さん、一瞬で済むんだ。何もハンコとって来いとは言わねえよ。この朱肉にちょっとその親指をだな……」
0385名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 02:51:22.23ID:0q51tHRo
藤崎詩織 35歳 第9話 Bパート

 いつもの詩織ならば、「君子危うきに近寄らずよ」と言いながら、見て見ぬふりをして別の道を通ったかもしれない。
そうでなくとも、相手は「ヤ」のつく人たちである。本当にいざという時になれば、何をされるか分からない。
 だが、今の詩織には見過ごすわけにはいかなかった。なぜならば、一夜明けて、圧倒的に少なくなった「自分よりも明らかに弱者」を発見したから。
自分より明らかに弱い者に対してだけは助けなければならない。それは詩織が優位に立って自己満足……ゴホンゴホン、ではなく、義憤によるものである!

「待ちなさい!あんたたち!」
「なんだてめえは!」
「大の男が寄ってたかって女性をいたぶるなんて、どういう神経をしているの?」
「ああん?おめえ、何言いがかりつけているんだよ?俺たちがいついたぶったって言うんだ?」
「一部始終見させてもらったわ!あんたたちのやっていることは、れっきとした脅迫よ!」
「うぜえな、関係ない外野は引っ込んでろや、怪我したくなかったらな」
「怪我したくなかったらなってどういう意味?」
「そのままの意味だ、自分で考えな」
「怪我したくなかったらなってどういう意味?」
「しつけえな」「おい、構うな」
「ねえ、怪我したくなかったらなってどういう意味?」
「うるせえ!殺されたいのか!」
「ふん……刑法第222条、脅迫罪、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を……」
「お、おい……」
「今、あんたたちは、『殺されたいのか』と言って、私の生命もしくは身体に対して明白に……」
「やべえぞ、こいつ、サツか?」
「弁護士です。あんたたち、どこの組?」
「お、おい……」「分が悪そうだな」「奥さん、また来るからな」

 ハッタリである。昔付き合っていた貧乏弁護士から聞きかじったことを思い出して、言ってみた。
あまりにもすらすらと言えたせいか、弁護士バッチをつけていないにもかかわらず、ヤさんたちは時代劇の小悪党のように立ち去っていった。
「あ、ありがとう……」
「別に礼を言われるほどのことじゃないわ」
「良かったら、上がって、ご飯でも食べていって下さい」
0386名無しくん、、、好きです。。。
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2013/02/24(日) 03:06:21.94ID:0q51tHRo
※ナレーション 立木文彦

SSスレへの移行お願いしといてこう言うのもなんだがこれSSじゃないっスねw大作じゃん
じゃ、続き楽しみにしてます
0387名無しくん、、、好きです。。。
垢版 |
2013/02/24(日) 05:04:37.37ID:lJdBIHfw
緊急インタビュー 「藤崎詩織 35歳」の作者に突撃!

Q 「藤崎詩織35歳」大人気ですね、アニメ化、映画化も決まったようで、おめでとうございます。
A ありがとうございます。思わぬ大反響で、私としても嬉しい限りです。
Q 途中から作風が変わったのではないかという指摘がありますが……
A 序盤はある程度飛ばさないと(笑)。本編はまだまだ続きますしね。全部同じ作者が書いていますよ。
Q この作品を書くにあたって、影響を受けた作品はありますか?
A 「カイジ」シリーズですね。カイジのアニメを全部ぶっ通しで見てから書き始めました。
  だから、序盤の話でナレーターがカイジのナレーターと同じ人を当てられたときはびっくりしましたよ。
Q なるほど。そういえば、カイジと似たような作風ですね。さて、これからどんな展開に?
A それは読んでのお楽しみですが、これからは名づけるとしたら「根性食堂編」ということで、物語の後半に入ります。
Q そういえば、あの人は?
A おおっと!賢明な読者の皆さんならもう気づいていると思いますが、まだ登場していない人物がいます。その人がキーマンです。これ以上はいえませんね。
Q 先生はアンチ詩織なのですか?
A そうでもないですね、誤解してもらっては困ります。アンチ虹野でもありません。基本的にアンチのキャラはいません。
Q 最後に読者の皆さんに一言お願いします。
A これからも応援よろしく。そして、これからの怒涛の流れ、衝撃的で感動的なラストに乞うご期待!
0388名無しくん、、、好きです。。。
垢版 |
2013/02/24(日) 05:06:43.72ID:lJdBIHfw
もう少し待たれよ。これから物語は「根性食堂編」に突入する。

さて、ここで読者からのQ&Aコーナー

・伊集院はどうしてオカマバーにかくまわれていたの?
 →まだ教えられません。

・清川さんがどうして緑のおばさんに……水泳選手じゃないんですか?
 →交通事故で足をやられたのです。選手生命を事実上絶たれた清川さんは、交通安全を訴えるため、緑のおばさんになりました。
  なお、如月さんは最初から役所の職員として緑のおばさんをやっています。

・RMY細胞って何?
 →諸説ありますが、「レイサマメイサマユイナサマ細胞」の略だというのが通説です。
  あらゆる病気を治す細胞として注目されていましたが、細菌兵器ではないかとの疑惑も持たれています。

・コアラとメット以外は全員未婚なの?
 →虹野さん、清川さん、如月さん、優美も結婚しています。
  また、閣下と鏡さんは仕事の都合で夫婦別姓です。片桐さんは同棲中で結婚間近です。
  夕子はバツ1で、今フリーですが、同窓会で好雄と再会し(以下略)。

・あの〜、一人忘れてません?
 →忘れていません。むしろ真打ちです。その人の活躍に乞うご期待!
0389名無しくん、、、好きです。。。
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2013/03/02(土) 22:57:48.01ID:X03eb7vH
  ∧_∧
 ( ・∀・)
 ( ∪ ∪ -期待age-
 と__)__)
0390名無しくん、、、好きです。。。
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2013/03/02(土) 23:37:33.06ID:qW0mOUtm
早くしろ、風邪引くだろ
0392名無しくん、、、好きです。。。
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2013/03/22(金) 08:32:16.21ID:bEIfLZro
こりゃ筆者も飽きたな
0396名無しくん、、、好きです。。。
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2013/04/30(火) 23:19:26.96ID:Fhp2UugB
根性食堂編は?
0398名無しくん、、、好きです。。。
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2013/10/07(月) 00:00:57.37ID:BqCsmOwQ
さくや
0399名無しくん、、、好きです。。。
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2013/12/02(月) 13:35:06.29ID:OmVH0rBx
根性食堂編待ち
0400名無しくん、、、好きです。。。
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2013/12/03(火) 18:26:26.51ID:K9Q6qsKW
19歳の時に出来た彼女が詩織っぽかった。
山本香織ってコ。
2週間くらいで分かれちゃったけど。
0401名無しくん、、、好きです。。。
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2014/02/28(金) 21:55:57.30ID:RHTg98gK
保守あげ
0402名無しくん、、、好きです。。。
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2014/02/28(金) 21:57:43.76ID:FGJIOkur
勇気の神様の替え歌で、
「気づくとIPチェックしてる」ってやつ覚えている人いない?
歌詞張ってほしい。
0403名無しくん、、、好きです。。。
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2014/03/01(土) 19:10:14.93ID:zPjylqvz
むーむーさんが書いた陵辱のメモリアルが凄いと聞いたんですけど、どこかで見られませんか?
随分前にサイトが消えてしまったようで・・・
0404名無しくん、、、好きです。。。
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2014/03/15(土) 20:23:31.97ID:rl20xiM9
0407名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2014/09/18(木) 03:37:31.40ID:icCGWCcs
巷では「吹奏楽部(軽音部)の片桐さん」が主流みたいだけど
あえて「美術部の片桐さん」とのSSでも書こうと思ってるんで
完成したら投下させていただく保守
0408うしとらパロ@転載は禁止
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2014/09/22(月) 02:56:40.15ID:sgRa267Q
主人公「鬱陶しかったんだよなぁ・・・虹野さんのあの甘ちゃんの目・・・。
 『どんな時でもあなたを応援してます』って感じの目。
 これで帰りの誘い断ったりデートすっぽかせば、あのお人よしの虹野さんも
 俺の正体にようやく気付くだろうさ。俺がサイテーの爆弾職人だってなァ!」

片桐「くく・・・くふふ・・・ふふ・・・」
主人公「何笑ってんだ」
片桐「What is this? なーんだ、なんのコトはないわ。
 あなたは虹野さんの目に耐えられなかっただけじゃない。ふふふっ。
 『そんな目で見ないでくれ』『俺はそんなに根性がある奴じゃない』
 『俺はそんなんじゃない』・・・ってさ。ふふっはははっ」
主人公「・・・・・」
片桐「くふっふふふっ・・・!ふふっ・・・あっはははっははっは!
 とってもファニーね、デリケートさんっ!」

主人公「 だ ま れ ぇ ぇ !! 」
ドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ!!
片桐「あははは、怒った怒った!」
主人公「だまれだまれだまれだまれだまれだまれ――――っ!」
メキッ
片桐「 シ ャ ラ ッ プ 、 負 け 犬 !!
 あははは、怒った!デリケートさんが怒っちゃったわぁ〜!」
0412名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/01/11(日) 12:41:36.33ID:tZmgZPTP
如月「紐緒さん・・・・っていいましたっけ
 あなたは科学力に優れた素晴らしい超兵器の発明家だそうで
 しかし私の領域(テリトリー)の中では、あなたただの厨二病ですよ」
紐緒「・・・・」
詩織「紐緒さん!!挑発よ、乗っちゃダメ」

詩織「紐緒さん!!」
紐緒「『あつい』と言ったから何だというの?
 私が『あつい』と言えばあなたが私を殺せるとでも言うの!?」

如月「あ〜あ・・・・言っちゃいましたね」
0413名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/01/13(火) 16:36:53.70ID:Q3e1CxPO
>>412
片桐「鏡さん、オレンジジュースでいい?」
鏡「ええ」
詩織「私も同じのでいいわ」

鏡「あ、ついでに氷も入れてくださるかしら
  コップも透明なのがいいわね、ストローもあったらお願いね」
片桐「注文が多いわね〜」

 ド ク ン

鏡「!?」
如月「二人目ですね」

詩織「どうして!?」
片桐「ホワット!?鏡さん『あつい』って言ってないじゃない!!」

詩織「あ・・・」
片桐「あっ」

片桐「しまっ・・・!」
バァーン
0416名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/07/30(木) 01:32:54.94ID:F9m774Mw
ウィルソン「我々がこのたび20世紀に来たのは、
       21世紀の公人が廃人になってるからです」
好雄「そんなバカな、どうしてそういうことに?」

グレンチコ「一言で言うと爆弾汚染です。苺メット爆弾はもちろんですが
       特に爆弾による詩織の傷心度の汚染は詩織爆弾をも誘発し
       公人は振られてついに致命的な精神破壊を受けます」
ウィルソン「我々は、将来の公人の悲劇を救うためにやってきました」

好雄「救うったってあんた、一体どうやって?」
ウィルソン「詩織を、マッッサツするのです!」
エミー「ここに一冊の本があります」
0417名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/07/30(木) 01:34:44.28ID:F9m774Mw


ウィルソン「詩織は消えた。Mr.伊集院から連絡があった」
好雄「詩織ちゃんがときメモから消えた…」
グレンチコ「そう、我々の計画通りにいった、そこまでは…」
好雄「そこまでは?何か計画外のことでも?」
ウィルソン「詩織の代わりに…陽ノ下光が現れた」
好雄「陽ノ下光!?」

伊集院「確かに藤崎家は高見家の隣から姿を消した。
     だが同時に、高見家の隣に陽ノ下家が出現した!」
好雄「同時に!?詩織ちゃんが消えたことと何か関係が…」
伊集院「まだ何もわからない…。
     だが公人君は詩織君以上の脅威に晒されることになったわけだ」
外井「レイ様!陽ノ下光が公人様の下校に…!」
0418名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/07/30(木) 01:36:51.16ID:F9m774Mw


好雄「あの幼女があんなになって!」
伊集院「詩織君がまた戻ってきた」

ウィルソン「詩織が、復活したとは…」
グレンチコ「考えてみればどこの中学に詩織をワープしようと
       詩織のきらめき高校入学は避けられなかったかもしれない」
ウィルソン「我々がせっかくマッッサツしてやったのに…」
グレンチコ「おろかな時代だ、救いようの無い原始人どもだ」

ウィルソン「ワレワレノヒロインヲ、シオリトタタカワセロ!!」



高見「奴はもう一度、我々のために戦ってくれる」
ウィルソン「ユケッ、陽ノミョト光!」
0419名無しくん、、、好きです。。。@転載は禁止
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2015/12/18(金) 15:49:50.38ID:XJHlwJII
飼育
0421名無しくん、、、好きです。。。@無断転載は禁止
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2017/02/13(月) 22:24:49.10ID:oJ27EDju
今の若い衆の思い描くヒロインってこんな感じなんだろうな・・・
良くも悪くも現実思考になったというか・・・
俺たちの頃(23年前)は脳内の理想の世界を味わうのが主流だったから
マジ、時代も変わったよなぁ〜
https://www.famitsu.com/images/000/126/468/589ade7d0b0ca.html
0424名無しくん、、、好きです。。。
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2017/10/10(火) 23:07:37.24ID:7c14DEZ1
>>423
昔はときメモのSSサイトいっぱいあったよね 今はほとんど更新凍結状態になったり、無くなっているけど
最近読んで、面白かったサイトを幾つか紹介してくれないかな?
0425名無しくん、、、好きです。。。
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2017/11/30(木) 13:43:31.74ID:viCuw7bt
MAG速とは

・前のサイト名は来世から本気出す
・VIP・なんJスレ、オープンスレを転載
・ネガティブな記事やアニメ・声優下げが顕著
・コメント欄の質の悪さは不快極まること請合い
・民度が低い住民の記事内での扇動や対立煽りが特徴
・まとめブログのダメージ0とトップページが酷似している
・特定のアニメや声優ネタの連投ばかりで飽きられている
・偏った内容の記事やコメントが目立ってしまうからアンチ量産
・アニメ・ゲーム・漫画・声優業界の癌細胞でしかないアフィカス

※記事内容を信じないようにしましょう (不快ならブロックリストで非表示に)
0426名無しくん、、、好きです。。。
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2018/01/13(土) 23:05:16.67ID:pd+RepoC
ギャルゲームじゃないけどお得なネット情報館
グーグル検索⇒『稲本のメツイオウレフフレゼ』

DHEO2
0428名無しくん、、、好きです。。。
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2018/08/09(木) 12:16:41.94ID:y9c91Lzm
>>427
桜じゃないね。
桜なら華が散った後に葉が芽を出して、枝を覆うからね。
設定資料にはなんとも書いてないので分からないな。
0429名無しくん、、、好きです。。。
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2019/04/27(土) 14:18:57.09ID:i6t1Ifnk
そうなんだ
0430名無しくん、、、好きです。。。
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2019/05/06(月) 23:24:06.03ID:SlNZ91lk
po
0435名無しくん、、、好きです。。。
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2020/01/05(日) 00:38:26.07ID:hedUyG/1
>>434
この文章、日本語がおかしいよ
×学校に、ブルマを復活してください→○学校に、ブルマを復活させてください
あと「実際のタイム」って何のこと?まったく意味分からん
よく2chのスレにいきなりコピペの政治的意見などを書き込む奴いるけど、
こんなところに書き込むより、文部科学省に請願するための署名活動でもしたら?
0437名無しくん、、、好きです。。。
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2020/02/04(火) 12:55:07.93ID:gtAlQOKS
>>434
何の脈絡もないスレに突然
・憲法改正9条改定に賛成しましょう
・日本の核武装に賛成しましょう
・ブルマを復活させましょう
とか書き込む奴はバカ以外の何物でもない
実効性がない無意味なことだということに気づいていないのかな
ガキなんだろ
0440名無しくん、、、好きです。。。
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2020/08/18(火) 21:08:55.20ID:aPT0DWfw
439です。有言実行しに来たよ。最近になってときメモを知ったばかりのにわかだから、所々ベテランの知識や解釈と異なるのは
勘弁して欲しい。2の赤井ほむらがすごく良かったから書いたから、今から投下していくね。連投規制に引っかかりませんように……。
0441赤井ほむらの猪突猛進 1/13
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2020/08/18(火) 21:11:05.26ID:aPT0DWfw
「ほむら、デートしようぜ」
「へ?」
 メシの最中に電話をかけてきたと思ったら、あいつの開口一番がそんな一言だったもの
で、つい間抜けな返答が出てしまった。
「いや、デートしようぜ、って」
「そりゃ聞こえてるよ」
「何か変なこと言ったか?」
「別に変じゃねえけどよ、お前いつも『遊びに行こうぜ』って誘ってくるだろ」
「あー、それなんだけどさ」
 高校生活で多分一番たくさん一緒に遊んだあいつとあたしの関係は、前代未聞のあの卒
業式の日から少し変わった。前進した、と言えばいいのかな。頭のバカなあたしにだって
へったくそだったと分かるあんな告白でも言いたいことは伝わってくれたらしく、ちゃん
とあいつから「好き」って意思表示を聞けた。ほんの2,3週間前なのに、思い出すだけ
でまだ顔が熱くなる。
 なんでもあいつが言うには、友達同士から恋人同士になったんだから、始めからそうい
う風に誘って一緒に出掛けてみたかった、って事らしい。
「デートか……まぁいいや。もちろん行く! いつ行くんだ?」
 遊びに行くのとデートするのって、何が違うんだろうな。よく分からないけど、何とな
くウキウキしてくる。
「ちょっと急なんだけど、今週の土曜、午後1時集合でどうだ?」
「オッケー。明日だって行けるぜ」
「悪いな、四月以降、大学の予定がまだどうなるか分からないからさ、今月中がいいんだ」
「おう分かった。じゃあ、ラーメン伸びちまうから――」
「あっ、待ってくれ! お願いがあるんだが……」
0442赤井ほむらの猪突猛進 2/13
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2020/08/18(火) 21:12:46.83ID:aPT0DWfw
 翌日、あたしは一人でブティックへ買い物に来ていた。まだ残っていたお年玉を、とり
あえず全額引っ掴んで。
「可愛いカッコ、ねぇ」
 『できるだけ可愛い恰好で来て欲しい、ほむらのセンスに任せるから』なんてリクエス
トをあいつはぶつけてきた。以前のあたしだったら絶対、間違いなく「めんどくせえ」っ
て断っていた。何しろ、持っている私服は未だに、面白そうだからという理由で買ったも
のばかりで、周りのコみたいな女の子らしいものなんてロクに持ち合わせが無かった。あ
いつの趣味なんだろうけど、クリスマスプレゼントにくれたスカートは好評だったし、あ
たしのお気に入りの一着でもあるんだけど、それももう何回か履いていってたから、今回
は見送ることにした。
「うーん……」
 とはいえ、どこからどう見たらいいものやら。様々なテナントの店が立ち並ぶフロアの
ディスプレイを少し眺めてはまた歩いて。あたしはぐるぐるしてばかりだった。可愛いの
を真面目に選んでうまくいく自信はそんなになかったけど、他ならぬあいつの期待には応
えたい。「いいぜ、あたしの本気を見せてやるから期待してろよ」なんて威勢よく言って
しまったし。でも――ちゃんと気を遣ってみた服装にあいつがどんな反応をしてくれるの
か、それが何より楽しみだった。
 可愛いって言ってくれっかな。見惚れちゃったりすんのかな。……あー、まだ何を着て
いくかも決めてない内からドキドキしてきてるのが分かる。
「……お客様?」
 目の前で何かがヒラヒラしているのを見て、我にかえった。店員があたしに手を振って
いた。「何かお探しですか?」というキレイな営業スマイル。
 とりあえずここ見てみっか。案内されるまま、ブースに足を踏み入れる。
0443赤井ほむらの猪突猛進 3/13
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2020/08/18(火) 21:14:45.09ID:aPT0DWfw
「デートだなんて素敵ですねー!」
 見知らぬ人へ馬鹿正直に話すこともなかったな、なんて思いつつも、店員に事情の一部
を説明した。ちらと視線を巡らせると、大人っぽいの、派手なの、結構色々なのがある。
値段がいくらなのかはここからじゃ分からないけど、結構しそうだ。
「コーディネートはどんなのにするか、考えてたりします?」
「うーん、まぁ、何となくは」
 スカートは必須だよな。あいつを驚かせたいから、いつものイメージとはちょっと違う
のがいい。暗めの色は、いつものイメージと違うけど、あたしには似合う気がしなかった。
 吊るされた衣服をあれでもないこれでもないと手に取りつつ眺めていると、ある一着が
目に留まった。
「これ……」
 オレンジ色のワンピース。制服とか例のスカートとは違って、長くて裾がヒラヒラして
る。ハンガーを棚から外しただけで、空気の上をふわっと踊る。うっすらと向こう側が透
けて見える下半身部分が、なんとなく涼しげなのに、温かそうでもある。姿見の前に立っ
て自分の体に合わせてみると、足首がすっぽりスカートに隠れた。
「お客様、アクティブ系な印象を受けますけど、普段そういうのも着られるんですか?」
「いや、まったく。ワンピースって持ってなくて」
 こういうタイプの服で唯一の例外といえば、一回だけ着たあのドレスくらいのもんだな。
積極的に着てみたいって思ったことはない。
「案外イケちゃうと思いますよ! 試着してみます?」
 スカートの緩いヒダが、腕にじゃれついてきた気がした。
「……うん」
 試着するだけならタダだし、このワンピースには興味を惹かれた。このふんわりした感
じと明るさ、いいよなぁ。試着室に入れてもらい、上着だけ脱いでそれを被ってみると、
サイズ感は悪くない。丈が長すぎて引きずることも無いし、横や後ろを見ようとして体を
ねじると、それについてくるロングスカートがさらりさらりとなびく。内側に隠されてい
た値札もチェックしておく。これならいける。
0444赤井ほむらの猪突猛進 4/13
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2020/08/18(火) 21:17:21.29ID:aPT0DWfw
「へぇ〜……いいなぁ、これ」
「お客様、いかがですか?」
 試着室の外から尋ねてくる店員に、カーテンを開いて見せてみる。ぱっちりした目が大
きく見開かれた。
「いいですよ! すごくいい! 似合いますね!」
「へへ……可愛い?」
「めちゃくちゃ可愛いです! 普段のお召し物とギャップがあるなら、なおさらですよ」
「……じゃ、これ下さい」
「ありがとうございまーす!」
 営業トークに乗せられちまったかな。でも、あたし自身がこれでいいと感じたんだから
これでいい。同じように選んだ浴衣とか水着だって気に入ってもらえたんだから、きっと
大丈夫。万が一ヘンだったとしても、あいつは懐が深いから、笑ってくれるよな。
「他に何か見ていかれますか?」
「この時期ワンピースだけだと寒いよなぁ……カーディガンとかあります?」
「ええ、ございますよ。ご案内しますね」


 数十分後、『楽しいデートになるといいですね』なんていう、白のカーディガンもしっ
かり買わせて満足げな店員の声を背中に受けながら、小奇麗な紙袋を手にあたしはその店
を後にした。これでオッケーだな、と思いながら、あいつがどんな顔するんだろう、って
また思い描く。楽しみだな。大盛り上がりになったら、初めてのちゃんとしたデートはど
うなっていくんだろう。まだ手を握ったこともないけど、一気に進展して……?
「いやいやまさか、初回からそうはならねえだろ。けど……」
 全くもってありえない、とは言い切れないし、ちょっとした弾みで見えたりする可能性
だってある。
「せっかくだし、いいのつけてくか……」
 出口に進みかけていた足を路線変更、下着売り場も見ていくことに決めたのだった。
0445赤井ほむらの猪突猛進 5/13
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2020/08/18(火) 21:19:08.41ID:aPT0DWfw
 土曜当日。抜けるような空は心地よく晴れ渡っている。ポカポカと暖かいけど、風が強
い。髪をポニーテールにして正解だった。
 そういえば、去年も一昨年も、これぐらいの時期に中央公園に誘われたな。春風に乗っ
て舞う桜の花びらが、それを思い出させてくれた。
 あいつはどこだ。いた。まだこっちを見つけてない。ゲートの柱に寄りかかって、本を
読みながら、時々顔を上げている。嬉しくなってきた。声を張り上げて呼びかけたい唇を
噛み、駆け寄りたいのを我慢し、歩く人波に紛れてゆっくりと忍び寄る。
「よ、待たせたな」
「……ん? ああ、ほむ――」
 掌から文庫サイズの本がべしゃりと滑り落ちた。
「お望み通り、本気出して来てやったぜ」
 落とした本を拾おうと屈んだあいつが、見下ろすあたしの陰に入った。
「……っ」
 咳払いと同時に、合わせた視線が逸らされる。おーおー、耳を赤くしてやがる。なかな
かいいリアクションじゃねーか。
「ほれほれ、恥ずかしがってないで何か言えよ」
 サムズアップがにゅっと突き出てきた。
「いい、すごくいい」
「どうだ、嬉しいか?」
「……ありがとう。感激だ。期待してたよりずっと可愛い。こんなに可愛い彼女とデート
できるなんて幸せだよ」
「へへ、そんな言い方……照れるぜ」
 だらしない顔になるのをこらえるようにあいつははにかむ。それを見ているだけで口元
が緩みそうだし、なんだか暑くなってきた。
「ほ、ほら、行くぞ。桜見に来たんだろ?」
 高鳴っていく鼓動が体を突き動かすみたいで、勢いのままあたしはあいつの手を握りし
めていた。
0446赤井ほむらの猪突猛進 6/13
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2020/08/18(火) 21:21:58.68ID:aPT0DWfw
 並木道の桜の木にはまだ咲きかけのものもあるけれど、多くは満開を迎えている。そこ
そこの人通りはゆったりと流れていて、あたしたちみたいにちょくちょく立ち止まってい
る人も多い。囲いの無い木も中にはあって、たいていそういう場所はもう場所取りを済ま
せた花見客にキープされてしまっている。
「綺麗だよな〜。何度見に来ても飽きないぜ」
 思わずため息をつく。中央公園は刺激が少なくて退屈だけど、この季節だけは話が別だ。
「今年も見に来られて良かったよ」
 頭一つ分高い所からあいつが相槌を打つ。掌を握りしめるようにしていた互いの手は、
歩く内に指を絡めあうつなぎ方に変わっていた。
 一緒になってバカみたいにあっちこっちで遊び回ってたあいつとこういうカンケイにな
るって、同じ桜を見てた高1や高2のあたしはちらっとでも考えたことがあっただろうか。
思い出そうとしたけれど、去年から今年の間だけでもあまりに色んなことがありすぎてす
ぐには思い出せなかったし――繋いだ、というより、大きなゴツゴツした手に包まれるみ
たいになった右手に伝わってくる熱が、そんなことを考える余裕を与えてくれなかった。
 青空から流れてくる花びらを視線で追いつつ、何度もあいつと目が合う。
「……何だよ。あたしの顔に何かついてるか?」
「いや……その、ほむらが可愛くて、つい」
「!! ……よ、よせって。ほら、歩く時に余所見すんなよ。転んじまうぞ?」
 一瞬、呼吸が止まった。いやまぁ、狙い通りというか狙い以上というか、願ったり叶っ
たりなんだけど、すげームズムズする。もっと褒められたいけど、互いの体温が伝わるこ
んな距離で言われると、恥ずかしくてたまらない。
0447赤井ほむらの猪突猛進 7/13
垢版 |
2020/08/18(火) 21:24:06.38ID:aPT0DWfw
 枝同士が触れ合ってできた桜のアーチをくぐったりしていると、花見客を狙った屋台が
見えてきた。
「何を食べるんだ?」
「まだ何も言ってねーだろ」
「えっ、食べないのか?」
「バカヤロー、こんな時にしっかり食わねぇでどうすんだ。食うに決まってるじゃねーか」
 たこ焼き、フランクフルト、焼きそば、ジェラートにクレープ……りんご飴もある。ど
れもいいな。焼きそばの屋台の辺りから漂うソースの匂いに、体の中から空腹感が沸き起
こってくる。
「お前、どれにすんだ?」
「昼飯は食べてきたしなぁ。アイスにしようかな」
「屋台あんのにそんだけしか食わねーのかよ。もったいねえなぁ。んじゃ、ちょっと買っ
てく――」
 踏み出そうとしたら、右手が後方に引っ張られた。
「……お前も来いよ」
「ん? どれ買うのか分からないし、ここで待ってるよ」
「い、いいから」
 手を離したくねえんだよ、って言いかけたけど……そんなこと口にしたらあたしはその
場で茹でダコになっちまう。
 ほどけそうになった指をぐいと捕まえて、一歩二歩。あいつもすぐに握り直してくれた。
0448赤井ほむらの猪突猛進 8/13
垢版 |
2020/08/18(火) 21:26:19.38ID:aPT0DWfw
 腰を下ろす所を探すこと数分。良さそうな場所にはことごとく先客がいる。そりゃそう
か。みんな同じこと考えるよな。歩き回っている内にもうフランクフルトは無くなったし、
すぐ食えそうだからと手に持っていたチョコバナナもあと一口。左の手首に提げた袋には
まだまだ色んなものがあるけど、このままだとうろうろしてる間に空っぽになりそうだ。
 混雑してきたし河川敷公園にでも行こうか、とあいつが提案してきて更に歩くこと数分。
中央公園とは違って、こっちには数えられそうなぐらいにしか人がいない。ちょっと湿り
気を帯びた風がひゅうと吹き抜けて、草の香りを運んでくる。芝生の緑の中に、鮮やかな
花の色が目立つ。ここにも春があるな。
「桜の木、見えなくなっちまったな」
「やっぱり見に戻る?」
「食ってからでいいよ。いい加減冷めちまう」
 土手から河川敷へ繋がる石段に腰を下ろす。熱心に握りしめてたのに、食欲に負けてる
みたいでごめん、と心の中であいつに謝りながら右手を離した。
 焼きそばは思いのほか、まだホカホカと温かい。隣に腰を下ろしたあいつは、時間が経
って結構溶けてきたジェラートアイスのカップにようやくスプーンを刺した。
「ほむら、退屈してないか?」
「全然。なんでだ?」
「俺のワガママに付き合わせちゃったかな、ってちょっと思ったんだ」
 良く言えば静か。悪く言えば何もない。あたしからすれば、河川敷公園に遊びに来る理
由は無い。でも、あいつと一緒にいれば絶対楽しいんだから、そんなことはどうだってよ
かった。
「こういう所、お前が好きなんだろ?」
「まぁな。俺のお気に入りだ。一人でこういう所に来てボーっとするの、好きなんだよ」
「だったらあたしも好きな場所ってことでいいよ。お前のワガママに付き合わされてるっ
て思ったら最初っからこねーって」
0449赤井ほむらの猪突猛進 9/13
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2020/08/18(火) 21:27:46.23ID:aPT0DWfw
「……ありがとう。今日はさ、ほむらとゆっくりしたかったんだ」
 シャクシャクとカップをかき混ぜながら、あいつはパクパクとアイスを口に運ぶ。白い
アレ、バニラ味かな、なんて横目で覗き込みながら焼きそばをズルズル食っていたら、あっ
という間にパックが空っぽになってしまった。
「な、アイス一口くれよ。甘いもの欲しくなっちまった」
 ああいいよ、とあいつがカップを差し出す。スプーンから、程よくとろけたのを一口。
 果物の爽やかな甘さ。バニラじゃなくてピーチだ。
「うめーなこれ。もう一口もーらい。……ん?」
 スプーンを咥えたあたしを見て、あいつが何やら固まっている。
「ははーん、お前、間接キスとか気にするタイプ?」
「いや、べっ、別にそんなわけでも」
「何なら、直接しちまうか」
「え――」

 風が止んだ。

 やべえ、やっちまった。

 それに気が付いたのは、あたしが顔を離した後だった。

 確かに接触した。まだその感覚が残ってる。

「わ……悪い。つい勢いで……。雰囲気無かったよな」

 ファーストキスってもう少しこう、いいムードの中でするものだって思ってたのに、こ
れじゃただのイタズラだ。

「赤井ほむら」
「お、おう」
0450赤井ほむらの猪突猛進 10/13
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2020/08/18(火) 21:33:51.00ID:aPT0DWfw
「そこから動くなよ」
「え、あ?」

 もしかして怒らせちゃった? 右肩を掴まれた。
 真顔のあいつがゆっくり近づいてくる。いや違う、なんか角度がついてる。
 もしかして、これは。多分、こうした方が。ギュっと目を閉じる。

「…………」

 何も来ない。
 まだかよ。
 するならこう、一気に来てくれよ。

「…………」
 じれったくなって左目をうっすらと開ける。瞬間、額にぺちっとした微かな振動。
 デコピンされた!? あたしはカッと目を見開いて「バカヤロー!」って言おうとした
けど、その叫びは……あいつに吸い込まれてしまった。

 時が、止まっている。
 ほんの数秒前まで聞こえたはずの、風にそよぐ草の音も、遠くに聞こえた犬の声も消失
した。それなのに、自分の鼓動がやけに響いてくる。

 ちょっと息苦しさを覚え始めた瞬間、あたしにくっついていた柔らかくしっとりしたも
のが離れていった。

「……俺たちの雰囲気って、こんな感じだろ」
「お……驚かすんじゃねーよ、バカヤロー。この……ば、バカ……」
「それは俺のセリフだ」
 さっき食べたばかりのアイスの味が濃くなった気がする。口の中の甘ったるさがどんど
ん強くなって、体中が熱い。
 遊んでて楽しい時とは違う高揚感が全身を駆け巡ってて嬉しい一方、叫びたいぐらい恥
ずかしい。
0451赤井ほむらの猪突猛進 11/13
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2020/08/18(火) 21:35:15.27ID:aPT0DWfw
 でも――さっきやらかした瞬間の気まずさは、完全にどこかへ行ってくれた。

「な、たこ焼き食おうぜ」
 袋の中にあった最後のパックを出して、片方の竹串をあいつに握らせる。さすがに冷め
てるけど、火照った今のあたしにはちょうどよかった。
「一つ、思い出した」
「思い出した、って何のこと?」
「2年の修学旅行でさ、夜景見に行こうぜ、ってあたしが誘ったの、覚えてるか?」
「あー、あったあった」
「あの時すげーいい雰囲気でなんか甘酸っぱ〜い気分になってて、その場の勢いで……こ、
告っちまおうかな、って思ってた。でも、その時の気持ちを何て言い表したらいいのか全
然分かんなくて、何も言えなかったんだよな」
 あいつが目を丸くした。
「なんだ……脈アリだったのか」
「え? もしかしてお前も、あの時……?」
「完全にタイミング逃した、って後悔してたんだ、俺はずっと」
「……いつから?」
「いつから、って」
「い、いつから、その……あたしのこと、すす、す、す、好きだったんだ?」
 刺激が強すぎる暴露話。今となっちゃ昔のことなんてどうだっていいけど、異性として
意識されてた期間の長さは気にならないわけがない。
「……一年の夏かな」
「い、一年?」
 その頃なんて、ただの面白い遊び友達ぐらいにしか思ってなかったぜ。
「縁日とか花火大会とか、誘ったら来てくれただろ。ああ、こういうのにノッてくれるん
だったら、警戒されてないんだな、って」
「ま、楽しそうだったからなー」
0452赤井ほむらの猪突猛進 12/13
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2020/08/18(火) 21:37:17.63ID:aPT0DWfw
「お前には分からなかっただろうけどさ。俺、遊びに誘う電話する時、いつもドキドキし
てたんだぜ。オッケーもらってはしゃいでたしな」
「へー……ほー……ふーん……あー、何かニヤけちまう。嬉しいぜ。ありがとな」
 恥ずかしさとは違う、じわりとした温かさが胸の内めがけて溜まっていく。いい気分だ。
「でもよ、それなら何でお前から言ってくれなかったんだよ。『赤井さん』って呼んでた
のが、いつの間にか下の名前で呼んでくるようになって、あんなにたくさん二人で遊んで、
デートスポットみたいな所もたくさん行って、そんなことが続けば、あたしだって女なん
だから『もしかして』って期待しちまうだろ。二人っきりでクリスマスプレゼントまでく
れたのに何にもしてくれねえもんだから、いよいよ後がねえってんで卒業式で最後の手段
に出たんだからな、あたしは。お前の罪は重いぜ」
「……悪かった、ごめん。お前と友達同士のままでいるのが心地良くて、『恋愛対象じゃ
ない』なんて言われたらこの関係も壊れてしまうと思って、踏み出せなかったんだ」
「……うん……分かるぜ」
 ああ――長いこと『友達以上恋人未満』ってヤツだったんだ。
 修学旅行の夜にやろうとしたことがずっとできなかったのは、きっとあたしもこいつと
同じ思いを抱えてて、臆病になっちまってたからなんだ。
「でもよ、もういいんだ。思い出は思い出。もう過去のことだし、あたしは土壇場の大逆
転勝利を収め、感動の最終回を迎えたってわけだ。最高のヒーローだろ?」
 残っていた最後のたこ焼きを頬張る。空っぽになったパックに視線を落とすと、不思議
と気分が軽くなったような気がした。
「何だよ、最終回って。終わっちゃうのか?」
「第一部はな。今はもう第二部が絶賛放送中だぜ」
「そうか……そうだな」
0453赤井ほむらの猪突猛進 13/13
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2020/08/18(火) 21:40:52.03ID:aPT0DWfw
 空の高い位置にあった太陽も随分西に傾いて、青一色だった空が少しずつ茜色に染まっ
ていく。
「そろそろ行こうか。なんだか風が冷たくなってきたよ」
「帰るにはちょっと早いよな。まだ遊ぼうぜ」
 差し出した右手が、温かさに包み込まれる。
「ゲーセンでも行くか? 俺も遊びたくなってきた」
「行く! 今日はあたしが勝つかんな。格の違いってヤツを見せつけてやんよ」
「そう言ってこの間も負けたヤツが何か言ってるぞ」
「うるせー、三度目の正直だ。分からしてやる……!」
 数えきれないほど繰り返してきたいつものやり取りに、心が落ち着きを取り戻していく。
 さっきみたいに甘々なムードに浸るのもたまらなかったけど、あんな時間がずっと続い
てたら、心臓がいくつあっても足りねえぜ。たまになら……そう、たまになら、さっきみ
たいにイチャイチャしたい。
 一応そこそこ高い下着をつけてきてたけど、その出番も無くて安心した。もしそこまで
一気に進んでたら、頭がおかしくなっちまってたな。
 ――でも、いつかは……いつかって、いつだ?
 結局、ゲーセンの筐体に辿り着くまで、妙なムズムズにあたしは揺さぶられたままなの
であった。


 終わり
0455名無しくん、、、好きです。。。
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2020/08/22(土) 13:35:05.59ID:qXJrmmdr
SS探してても見つからないor数が少ない。需要があるのに供給がない。
どうして盛り上がっている当時に作品を知らなかったんだ。
自給自足したから鬱憤を晴らしに来たよ。人もいないから……いいよね。
大体2年秋ぐらいの時期のお話。13レスほど借ります。
0456紅いハイビスカスとピンクのバラ 1/13
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2020/08/22(土) 13:35:58.21ID:qXJrmmdr
 うだるような夏の暑さもすっかりなりをひそめ、引っ張り出した長袖を着ていても汗
をかく気配すら無くなった。もう秋だ。数週間前は団扇をパタパタ扇ぎながら歩いてい
る人だらけだったのに、今は街中ではためくものと言えば、店の前にあるのぼりぐらい
のものだ。休日の駅前広場は人通りも多くそこそこに多く、流れている人を避けるよう
にして、俺みたいな待ち合わせ中の人が端っこに立っている。
 時計台に視線を送る。俺の待ち合わせ予定時刻まで、あと2,3分ぐらいか。何事も
なく辿り着ければいいんだけど、なんて、普通ならば大袈裟どころか荒唐無稽なことを
考えながら、内心で手を合わせて待ち合わせ相手の無事を祈った。
 それから数分。駆け寄ってくる姿を見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。
「ごめーん、遅れちゃったよね」
「大丈夫だよ、俺も少し前に来たばかりだったから」
 人混みに紛れていてもすぐに見分けがつくぐらい、寿さんはいつだってカラフルだ。
それなのに、けばけばしさは感じられず、派手過ぎる一歩手前でうまくバランスを取っ
ている感じがする。今日だって、大阪の食い倒れ人形みたいな紅白ストライプのジャケッ
トを着ているのに、コミカルな印象を受けない。おしゃれだよなぁ。
「今日は無事だった?」
「ねー、聞いてよ! すっごくラッキーなんだよー! トラックと一台も遭わなかった
し、ノラ猫ちゃんに引っかかれただけで済んだのー!」
 鼻息も荒く、寿さんは右の手の甲を差し出して指を開く。親指の付け根と、手首の辺
りに絆創膏が貼られている。猫に引っかかれるなんて十分に運が悪いのだけれども、い
つもの寿さんを知る今では、おみくじでいう所の中吉から大吉はあるような気がする。
「待たせちゃってごめんね。行こ」
「先に家電の所見に行っちゃおうと思うんだけど、いい?」
「うん!」
0457紅いハイビスカスとピンクのバラ 2/13
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2020/08/22(土) 13:38:57.03ID:qXJrmmdr
 寿さんは「すっごくラッキー」だと言っていたけれど、すっごくラッキーなのは俺の
方だ。今回は、一緒に出掛ける口実がたまたま発生して自然にそういう流れになり、勇
気を振り絞って誘う必要が無かったからだ。さらに、途中で大きな事故に遭うこともな
く、寿さんは元気にやってきてくれたじゃないか。それだけで、もう俺は嬉しい。
「寿さん、目覚まし無くて大丈夫だったの?」
「うん、待ち合わせが午後だったからねー」
「ははっ、それもそうか」
「ねー、もう何を買うか決めた?」
「いや、あんまり考えてなかった」
 壊れた目覚まし時計を買い替えるのなんてわざわざ誰かとするような用事じゃない。
それこそ一人で買い物に来れば済む話なのだが、隣に寿さんがいるのは、彼女も目覚ま
し時計が壊れて買い替える必要がある、という話になったからだった。今までで最も長
持ちしたので十ヶ月だったらしい。やたらと運が悪いとは聞いているし、その片鱗も見
ているけれど、一体そうなる原因がどこにあるというのだろう。
「そっかー……じゃあ、一緒に選ぼー! 美幸も、今度の時計何にするか楽しみだなー!」
「楽しみ?」
「そうだよ! 壊れちゃって直らないのは悲しいけどー……また新しいのと出会えるん
だから!」
「寿さんは前向きだな。俺も見習わないと」
「えへへ……そんな、大袈裟だよ」
 この人は凄い、と俺が心底思ってやまないのは、こういう考え方だ。寿さんにかかれ
ば、大抵の嫌なことは良いことに変わってしまう。たとえ今から豪雨が降ってきたとし
ても、楽しい気分になってしまうに違いない。
 駅前から見える場所にあったから、家電用品店にたどり着くのはすぐだった。時計の
置いてあるフロアにエスカレーターで登り、それらしいコーナーにさしかかると、壁に
もショーケースにも一面の時計。俺たちの目当ては目覚まし時計だけど、壁掛け時計の
コーナーでつい足が止まった。
0458紅いハイビスカスとピンクのバラ 3/13
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2020/08/22(土) 13:40:01.46ID:qXJrmmdr
「見て見てー! 鳩がポッポーって」
 ちょうど午後2時になった所だったようで、小窓の中から白い鳩のモデルが飛び出し
てきて、二回鳴き声をあげた。その隣では振り子時計のリズムに合わせてオルゴールが
流れている。
「ああいうの、寿さんの家にはある?」
「うーん……昔はあったみたいなんだけど、美幸が小さい頃に壊れちゃって、普通の時
計にしたって言ってたよー」
「家のリビングにも、凝った壁時計は無いな……。学校にあるみたいな、無機質なアナ
ログ時計だよ」
 定時になっていっせいに動き出した壁掛け時計のアクションが一通り終わったのを見
届けて、俺たちはまた歩き始めた。いくら休日とはいえど、こういうものを買いに来る
人はそう多くないようで、客足はまばらだ。程なくして、目覚まし時計が所狭しと並ぶ
ブースが見えてきた。
「すっごいねー! これいっぺんに鳴ったら大騒ぎだよねー!」
「想像したくもない……」
 ベルが鳴るモデル、数字がキャラクターのデザインになっているモデル……みんな機
能は同じなのに、デザインでこれだけの差別化がされている。とりあえず動けばいいや、
ぐらいの気分でいたが、こうなると色々見て選んでみたくなる。コーナーの一角には、
壊れた時計と同じものも置いてあった。
「ねーねー、どれにするの?」
「こんなにたくさんあると迷っちゃうね」
「せっかくだからさー、お互いの選んでみない?」
「えっ?」
「美幸がキミのを、キミが美幸のを選ぶのって、楽しそうだなーって」
「俺が選んで、寿さんのセンスに合うかな……?」
「とりあえず、やってみよ? ダメそうだったら、自分で選ぶからだいじょーぶだよ」
「……よし、分かった。やってみよう」
 俺が首肯すると、寿さんはにっこりと目を細めた。じゃあ、決まったら合流しよう、
ということになって、お互いキョロキョロと辺りを見回し始めた。
0459紅いハイビスカスとピンクのバラ 4/13
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2020/08/22(土) 13:40:59.97ID:qXJrmmdr
 どういう基準で選ぼうか。見た目だと……寿さんなら、可愛いキャラクター物がよく
似合うよな。ただ、最も長持ちした時計でも十ヵ月だと言っていたから、頑丈な物の方
がいいかもしれない。電池まわりのトラブルも多そうだ……。あまり思い入れの湧かな
い無機質な物の方が、もしもまた取り換えなくちゃいけなくなった時にドライな気分で
いられるかな?
 何を選んだら一番喜んでもらえるだろうか。カンニングができるのならばそうしたい
気分だった。
 寿さんは何にするんだろう。後ろを向くと、彼女もあれこれ手に取ってはしげしげと
眺めている。ディスプレイの品物を壊しちゃったりしないかな。そんなことがふと心に
浮かび上がる。
 十分ぐらい悩んで、何とか俺は一つだけ選ぶことができた。
「寿さん、決まった?」
「うん、もう決まってるよー!」
 これなんかどうかな、と言いながら寿さんが見せてくれたのは、木枠で縁取られた四
角いアナログ時計。手触りがサラサラしていて心地良い。
「こういうの、キミに合いそうだな、って思うんだー」
「シンプルだな、これ……って、あ、猫がいる」
 数字のデザインにもどことなく和の雰囲気が漂う中、模様かと思ったら、文字盤の中
央に白い猫が丸まっている。
「さりげなく可愛いね」
「でしょー? こういうのなら、男の子の部屋に置いても大丈夫、かな?」
「確かに、いいね。俺の部屋、インテリアらしいものなんてあまり置いてないから。こ
れにするよ」
「へへ、良かったー! で、で、そっちはどんなのを選んでくれたの?」
「……これ。どうかな?」
 俺が選んだのは、直方体のデジタル時計。一見ただの黒い箱に見えるけど、青のLEDが
時刻を表示してくれるようになっている。
「電池が充電式になってて、コンセントに繋げばチャージできるから、電池を交換しなく
ていいんだ。表面がゴムで覆われてて、ちょっとやそっとぶつけたぐらいじゃ壊れないだ
ろうと思って」
0460紅いハイビスカスとピンクのバラ 5/13
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2020/08/22(土) 13:42:09.95ID:qXJrmmdr
「すごいねー! 美幸の目覚まし、乾電池が爆発したり、朝起きたら床で割れてたりした
から、いいかもー!」
「み、見た目はどう?」
「デジタル時計って初めてだけど、新しい感じがしていいねー! 今までの美幸だったら
選ばなかったよ!」
 甲高い声で、これにするー! と言って、寿さんは時計を大事そうに抱え込んだ。
「こういう方向性の選び方もあるんだね! 新たな境地に目覚めそうな感じがするー!」
「……よかったよ」
 本当に気に入らなかったのにポジティブに受け止め直しているだけなのかも、と不安が
よぎったけれど、無邪気に笑っている寿さんを見ていると、その不安はすぐに掻き消えて
いった。
 互いに選んだ目覚まし時計を自分のカバンにしまい終えて店を後にする。合流した時は
若干雲が多かったが、晴れ間が広がっていた。ひゅうと一陣の風が吹き、寿さんの長い髪
が中空に舞う。
「天気、良くなったね」
「ホントだー、さっきより晴れてる!」
「今日は、ラッキーデー?」
「うん! ねぇ、美幸、見に行きたいお店があるんだけど、いい?」
「いいよ、行こうか」
「オッケー! じゃあ、早速いこー!」


 先導されるようにしてやってきた先は、何度か見に来た(本当に見ただけ)こともある
ファンシーショップだった。ただ、記憶の中にあるものと店の様子が違っている。随分と
繁盛しているようだけど、何が……?
「ここね、最近リニューアルオープンしたばっかりなんだよー」
「ああ、それで人が多いのか……?」
「どうしたのー?」
「なんか、男が多くないか? 普通こういう店って女の子に客層が偏ると思うんだけど……」
 店内に入る人、出てくる人を見ると、こういう店には似つかわしくない姿が妙に目立つ。
並んで出てくる女性も同じぐらいいるようだから、男に偏っているというわけでもなさそう
だけど、一体何だろう。
0461紅いハイビスカスとピンクのバラ 6/13
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2020/08/22(土) 13:43:37.89ID:qXJrmmdr
「あっ! ねぇねぇ」
 寿さんが俺の名前を呼ぶ。見て見て、と視線を誘導された先にはセールの掲示があった。
『リニューアル記念セール! 全品40%オフから! カップルは70%オフ!』
「最低でも40%、場合によっちゃ70%も……!」
 だから、男が多いのか。ということは、ここを出入りしているのはカップルばかりなのか。
 隣の寿さんが同じ部活の友達でしかないことに悔しさを覚える自分が切なかった。
「入ろー?」
 俺を招く寿さんの瞳はどこまでも澄んでいて、胸の高鳴りを覚えつつも、デートしている
つもりでいる俺が邪に思えてしまった。
「これかわいーねー……あっ、あれもー……」
 混み合う店内で、寿さんの視線はキビキビと動き回っている。俺が一つの商品を見る間に、
三つか四つぐらいは見ているのではなかろうか。カタツムリのようにのろのろと棚の商品を
眺めていると、小銭入れが目に入った。先月財布を買い替えたばかりだけど、思ったより細
かいお金の出し入れが不便になっていたな、と思い出しながら、水色の小銭入れを手に取る。
「……ん?」
 穴に通されたリングに、もう一つ同じようなサイズの小銭入れが付いている。ペアで使う
のを前提にしているのかな。ひっくり返してみてみると、花の刺繍があしらわれている。水
色の方は、赤いハイビスカス。エメラルドグリーンの方には、ピンク色のバラ。持ち運びの
利便性は申し分ない。最低でも40%オフは保証されているわけだし、値段もそこまでしない。
男が持つアイテムとしてどうなんだろう、と思わないでもないけど、買おうかな。
「何見てるのー?」
「ああ、小銭入れ買っておこうかな、って思って。安いし」
「二つもいっぺんに使うのー?」
「うーん、一つは予備ってことにするにも、そんな頻繁に取り替えるものでもないし……」
「お花の刺繍、キレイだね。色の組み合わせもいい感じー」
「……寿さん、片方持っていく?」
「えっ?」
「あっ、い、一緒に使おうって言うんじゃなくってさ。小銭入れ欲しいんだけど、使うのは
一つで十分だし……」
0462紅いハイビスカスとピンクのバラ 7/13
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2020/08/22(土) 13:44:32.27ID:qXJrmmdr
「それならー……」
 冗談半分で、笑い飛ばされるつもりで言った提案――それと俺の弁解――を聞いて、寿さ
んは手元の小銭入れに視線を落とした。
「もらってもいいー?」
 ふんわりと寿さんが笑う。
 でも、気のせいだろうか。一瞬だけ、瞳に翳りが見えたような気がする。
「……いいよ。どっちにする?」
「どっちもいいなー……キミが選んで、残った方にするー」
「じゃあ……」
 会計が終わるまでに考えておく、と言いながら、考える時間を稼いだ。俺はどちらでもよ
かった。となれば、どちらを寿さんにあげるか、だ。キャラクター系の小物を身に着けてい
ることが多い彼女には、どちらの花が似合うのだろう。花ということは、花言葉があったり
するんだろうか。だが単なる男子高校生が花言葉になんて精通しているわけがない。悪い意
味のものを渡してしまったらどうしよう。
 レジまではほんの十数秒しかなかった。いや、まだだ、会計が終わるまでは……。
「お客様、お客様」
 柔らかい笑みを浮かべた店員に、多く支払い過ぎていると指摘された。
「あちらの女の子と、ペアで使われるのでしょう?」
「い、いえっ、俺たちはそんな――」
「初々しいですね。お付き合いを始めて間もないのですか?」
 こんなことを寿さんに聞かれては、と思って背後をちらりと見たが、幸か不幸か、俺の隣
や後ろにはいなかった。どこか別のコーナーを見ているようだ。
「……まだです。た……ただの友達なんです。だから、この金額で……」
 思い切り声をひそめる。ただの友達、と言葉にすると、口の中が苦かった。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
 大量にお釣りが返ってきた。包んでもらった商品をもらう瞬間「頑張ってくださいね」な
んて励まされるおまけつきだ。
 会計を終えて振り返ると、俺の背後に何人かの列が形成されていた。その中には寿さんの
姿もある。
0463紅いハイビスカスとピンクのバラ 8/13
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2020/08/22(土) 13:46:44.27ID:qXJrmmdr
「先にお店の外で、待っててー」
 そんなことを言う寿さんは右手に何かを持っていたようだったが、体に隠れて見えない。
 店の外で、二つの小銭入れを繋いでいたリングを外していると、寿さんも会計を済ませて
店から出てきた。
「じゃあ寿さん、これを」
 結局どちらを渡すかを決定できないままに俺が渡したのは、水色の、ハイビスカスの花が
ついた小銭入れだった。
「ありがとー! じゃあ美幸からも、これあげるね」
 差し出した右手に、何かを乗せられた。
「寿さん、これは……?」
「美幸からのお礼ー」
 砂時計だった。ただ、俺が知っている、試験管のような無職透明のケースではなく、深い
青のガラスケース。黄色い砂が中でサラサラと揺れている。
「時計で被っちゃって、ごめんねー」
「へえ、砂時計ってこういうのもあるんだ……海の中みたいで、キレイだなぁ」
「そうなんだよー。定価がちょっと高かったけど、思いっきり値引きしてもらえたからラッ
キーだったの」
「ありがとう、寿さん」
「へへ……どういたしましてー」
 いつものようにニコニコしながら、寿さんが水色の小銭入れとリングをカバンにしまった。
「さて、どうしようかな」
 お互い、夕方には解散する予定になっているけれど、まだそこまでの時間は残されている。
しかし、カラオケに入ったりするには足りないし、ちょっと中途半端な時間だ。
「どっか行くー?」
「そうだな……お茶でもしていく?」
「いいねいいね! 行こー!」
0464紅いハイビスカスとピンクのバラ 9/13
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2020/08/22(土) 13:48:22.11ID:qXJrmmdr
 付近の施設で良さそうな所は、駅前のコーヒーショップだった。少しばかりの並びが発生し
ていたが、テイクアウトを注文する客が多かったのか、二人が座る場所までが埋まってしまう
ことは無いようだった。
「席空いててラッキーだったね」
 先に席を取っておいてくれた寿さんに、キャラメルマキアートを差し出す。ラッキー、とい
う言葉に、彼女は顔をほころばせた。
「ねぇ、ハイビスカスの花言葉って、知ってるー?」
「……ごめん、俺、花言葉とか全然知らないんだ」
 花言葉――先程の懸念がもう的中した。素直に謝るほかなかった。
「赤いハイビスカスだと『常に新しい美』とか『勇敢』っていうのがあるんだよー。美幸は勇
敢じゃないかもだけど、アクセとか小物で新しい物結構買ったりするから、そういう所、合っ
てるなーって思ったんだー」
「へー、そうなんだ。よく知ってるね」
「ちなみにー、ハイビスカス全般だとね……『繊細な美』と、それから――」
 ぱっちりした大きな瞳にじっと見つめられる。体温が上がりそうだ。
「……へへへ、何だったっけ、忘れちゃったー」
 何かを言いかけた寿さんが、はにかんで視線を逸らした。
「えっと……俺が持ってるこれは?」
 ポケットにしまっていた小銭入れをテーブルに出す。ピンク色のバラが咲いている。
「んーとね……バラの花言葉ってすっごくたくさんあって、色とか本数でも変わってくるんだー。
美幸も全部を知ってるわけじゃないけど……ピンクのバラは『幸福』だったかなー」
「幸福? じゃあ、こっちの方が、寿さんに合ってるんじゃないかな。今からでも交換する?」
「ううん、いいよ。もし美幸がどっちかを選べたとしても、ハイビスカスを選んだと思うから」
 寿さんは、小銭入れのハイビスカスを見て目を細めた。
「それにしても、不思議だな。花に言葉としての意味を持たせるなんて、どこから始まったんだ
ろう。俺には想像もつかないや」
「割と最近みたいだよー。フランスの貴族階級の人たちが始めたのが、200年ぐらい前、本になっ
て広まったんだってー。花の性質とか特徴から決めたのと、ふるーい文化から決めたのと、二種
類あるんだってー。最初に決めた人、すごいよねー!」
「寿さん、詳しいなぁ。すごいや」
0465紅いハイビスカスとピンクのバラ 10/13
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2020/08/22(土) 13:49:40.39ID:qXJrmmdr
「えへへー……学校の勉強はできないし、キミみたいにテニスも上手くないけど、こういうのは
ねー……」
 ストローを咥えたすぐ傍の頬が、ほんのり赤くなっている。照れているのかな。
 それにしても、ピンクのバラは『幸福』なのか。今の俺の人生が果たして『幸福』なのかどう
かは分からないけど、寿さんとこんな風に二人で出かけて談笑できているこの瞬間は、間違いな
く幸福だな。これが、もっと先に進めればもっといいのに。


 先月行った修学旅行の話やら、追加で出された数学の課題のことやら、色々な話で盛り上がっ
ていたら、もう外が薄暗くなってきていた。いつだって、楽しい時間はあっという間に過ぎてし
まう。今日も、それは例外ではなかった。
「日が落ちるのがすっかり早くなったね」
「もう、秋だねー。夕方になると、ちょっとひんやりするしー」
 確かに、日中は涼しいと感じていた風も、今は少々肌寒さを覚えるぐらいだ。帰っていく人達
も心なしか急いでいるように見える。途中まで帰る方向が一緒な俺たちも、東口方面から流れて
いく人波に紛れていく。カラフルな寿さんは目立っていて、やっぱり見失いようがなかった。
 もう少しこの時間が長引いてくれれば、と思いながらも、俺と寿さんが別れる交差点までは、
残酷なほどにあっという間だった。
「よし、じゃあここで。また――」
「あ、ま、待ってよー」
 手を振りかけた俺を、寿さんが呼び止めた。
「あのー……美幸の家まで送って欲しいなー……って言ったら、困っちゃう?」
「えっ? いや、全然そんなことはないよ」
 むしろ喜んで、という言葉は、言いかけて慌てて飲み込んだ。そうか、もう少し一緒にいられ
るんだ、と思うと否応なしに胸が高鳴る。
「よかったー! もう少しお話したいって思ってたんだー! じゃあ行こ、こっちだよ」
 いつもは左折していく交差点を、今日は右折することになった。通ったことはあるけど、通り
慣れない道……見たことのある眺めが妙に新鮮だ。大丈夫だろうとは思いつつも、念のために自
分は車道側に立った。
「今日買い物した時さー、何%オフになったー?」
 店員のニコニコ顔と、多過ぎるからと返された釣銭が脳裏に浮かぶ。
0466紅いハイビスカスとピンクのバラ 11/13
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2020/08/22(土) 13:52:01.41ID:qXJrmmdr
「……70%オフだった」
「やっぱり? 美幸が買ったのも70%オフだったよー! なんかー、ちょっと恥ずかしかったなー」
 歩く度に、頭頂部のアンテナがぴょこぴょこと揺れている。
「まぁ、男女二人で店に入ってきたら、そう見えるものかもね」
 そう見えていて欲しい、と内心で俺は付け足した。
「……ねぇ、ちょっと聞いてもいいー?」
「うん、何?」
「キミって、彼女いるの?」
「はっ!?」
 思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「い、いや、いないけど。っていうか、今までいたことも……」
 そして、動揺からつい余計なことまで口走ってしまう。
「へー、そうなんだー」
「こっ、寿さんの方は、どうなんだよ」
 それが絶望を生むものかもしれないとは考えず、つい俺も尋ね返した。
 数秒の沈黙。心拍数が一気に跳ね上がり、肌が粟立つ。
「美幸はねー……いないよ、今は」
「今は? 前にはいたんだ」
 良かった、本当に良かった。動揺からの平静、急上昇からの急下降。背中に汗が滲む。
「何回かね、男の子から告白されて、お付き合いしたことはあったんだけどねー……」
 寿さんの声のトーンが下がっていく。
「……ダメだったんだー、みんな」
「ダメ、って」
「美幸と一緒にいるとどんどん悪いことばっかり起こっちゃってねー、『もうついていけない』っ
てフられてばっかりで……色々あったんだよー」
 いつもののんびりした調子の口調が、聞いていて痛々しいぐらいだ。俯いてしまった顔を覗き込
もうと思ったけれど、そっとしておいた方がいい気もした。
「一年の頃はあまり話さなかったけど、二年になってから、キミとはよく絡むようになったよねー。
一緒に遊ぶのも、もう5回目ぐらいかなー」
「あぁ、うん」
「一緒にいてすっごく楽しいしー、仲良くできて嬉しいんだー。でもね、美幸と一緒にいると、い
つかキミまで……」
0467紅いハイビスカスとピンクのバラ 12/13
垢版 |
2020/08/22(土) 13:53:39.33ID:qXJrmmdr
「そんなこと――」
「……キミのこと、傷つけたくないよ」
 寿さんは笑顔を作ったけれど、曇った目の、くすんだ作り笑いだった。
「そんなことにはならない!」
「え?」
「寿さんといて、不幸になんてならない。俺、証明する」
「どうやって?」
「寿さん、何があっても絶対めげないだろ。物事前向きにとらえてさ、細かい『ラッキー』をいつ
も見つけてるじゃないか。俺もそうする」
 拳を固める俺を見て、寿さんは一瞬目を丸くした。
「大丈夫なの? 大変だよ、絶対……」
「大丈夫だよ。大丈夫にするから」
 根拠なんて無いけど、不思議とそうできるような気がした。虚勢? いや、これは自信だ。
「分かった。じゃあ……また遊ぼうね、今日みたいに」
「今日は偶然だったけど、今度は俺から誘うよ」
 デートに、と言ってもきっと良かったような気がしたけど、そうは言えなかった。
「うん、連絡待ってるよ、美幸」
 立ち止まったり、歩いたりを繰り返している内に、初めて見る寿さんの家の表札が見えた。
「それじゃあ、本当にすぐそこだけど……じゃあね、また」
 今度こそ手を振って、踵を返した。帰ってゲームでもしようかな。
「……!?」
 寿さんの家に背を向けて歩き出そうとした瞬間、背中に衝撃。驚いて振り向こうとした瞬間、何
かが腰に巻き付いてきた。
「キミのおかげで、元気出たよ。ありがとー……」
 今までに聞いたことのないような、落ち着きはらった色気のある声。
「こ、寿さん……!?」
「美幸から誘っても、いいんだよね」
「あ、あのっ――」
 するりと腕が解ける。背後を確認すると、そこに立っていたのはいつものにこやかな寿さんだった。
「へへ……おやすみー」
「あ、あぁ、お休み」
 それだけを交わすと、今度こそ寿さんは、パタパタと駆けていってしまった。
0468紅いハイビスカスとピンクのバラ 13/13
垢版 |
2020/08/22(土) 13:57:45.17ID:qXJrmmdr
 背中越しに伝わってきた温かさ。密着した瞬間漂ってきた甘い匂いがまだ肺の中に残っているよ
うな気がして、俺は酔っぱらいになっていた。
 嗚呼、俺が背を向けてさえいなければ、ハグできたのかなぁ。嬉しさと口惜しさがトランポリン
で跳ねまわっている。
「――うッ!?」
 突如、アスファルトとは明らかに異なる感触が右足から伝わり、余韻が砂粒になって消えた。
 このぐにゃりとしたモノは、まさか、犬の――
「うおおおおおお……うあああああああ!?」
 思わず飛びのいた先の左足にはべしゃりとした水っぽい何か――人の口から飛び出た残滓――が
あり……足元を見下ろした俺は叫ばずにはいられなかった。
 なんということだ、なんというアンラッキー……いや、違う、これはアンラッキーなんかじゃな
い。ウンが、そう運がついたのだ。そうに違いない。
 こりゃあ、前途多難すぎるぜ。
 ヤケクソに夜道を駆けながら、俺は寿さんへのリスペクトをますます強めるのだった。


 * * * * * * * * * * * * * * * *


ハイビスカス全般の花言葉は「繊細な美」「新しい恋」。

「新しい恋」「常に新しい美」の花言葉は、ハイビスカスがその日のうちに枯れてしまう一日花で
毎日新しい花を咲かせることにちなみます。


 終わり
0470名無しくん、、、好きです。。。
垢版 |
2020/12/04(金) 13:43:51.11ID:KgkfcKOL
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