「今の医師不足の問題が、単純にこの『M字カーブ』のせいにされているだけではと思っています。短期的には確かに減るけど、底の35歳でも76%。皆がやめるわけではなく、40歳には8割まで戻りますよね。現実として男性医師は育児休暇を取らない人が多く、出産というリアルなブランクもない。それで男性を確保したい、と。安直な解決法に行き着いたのではないでしょうか」

なぜこうなるのか、それは医師の入口である医学部の構造に課題があると山本医師は指摘する。

「今、入学試験=就職試験になっているため、こういった『いびつ』なことが起こるわけです。アメリカ等では医学部と大学病院が一緒ではない、教育機関だけに特化した医学部があります。ただ、日本では現状、付属病院の利益を大学の経営にまわしており、ここを切り離した時点で補助金に頼らないといけなくなるでしょう」という。

少子化により大学経営が厳しくなる一方で、容易には実現しづらい方策なのかもしれない。しかし、確かに純粋な教育機関としての医学部があれば公平な入試が行われる可能性は高いだろう。


目指すべきは男性医師も働きやすい環境

もう一つ、入試差別問題を考える上で鍵となるのは、医師の仕事における「長時間労働問題」だ。

国の「働き方改革」の一環として、厚生労働省では「医師の働き方改革に関する検討会」を設置し、医師の労働時間の上限に関する議論を行っているが、現段階では、まだ具体的な数字は見えてこない。

長時間労働の一因にはやはり医師不足があり、その状況からも育児などで常勤が難しい女性医師の敬遠へと繋がりやすい。しかし、小児科医の森戸やすみ医師は「そんな職場では女性のみならず、男性だって続かない」と語る。