「男性医師だから産休も育休も取らない、常にフルで働けると見なされて、病欠も介護休業も取りづらい環境となれば、男性だって続けられません。現代は、共働き世帯が専業主婦世帯の約2倍です。男性医師の配偶者は専業主婦の割合が一般より多いかもしれませんが、それでもまったく家庭を顧みず、何かあったらすぐに病院に行ってしまうお父さん、
夫って、今後はどうなんでしょう」

事実、森戸医師のクリニックに訪れる父親たちの姿はすでに変化しているという。

「子どもを『育てている』と感じる父親が増えました。昔は我が子について何を聞いても答えられない父親が多かった。『食欲はどうですか?』と聞いても『わからないから妻に電話します』。それが普通だったのが、最近では父親自ら『おむつを替えていたら、どうも便の色が白いようです』とか『いつもに比べて今日は「このくらい」しか食べません』とか具体的に教えてくれるのです。

父親だって時間があれば仕事だけじゃなくて育児もしたいはずなんですよね。だから取り組むべきは男女ともに働きやすい環境を作ることで、それを置いて入学時点で女性を制限するなんて、本当に論外だと思います」



現場は女性医師を求めている

とりわけ森戸医師のような小児科では、出産・育児の「ブランク」は「育児経験のある女性医師」としての信頼に繋がり、父母の抱える育児不安を解消してくれる。

さらに小児科に限らず、「女性医師のほうが、ガイドラインにのっとった丁寧な治療をするから治療成績がいいというデータもあります」と森戸医師は語る。

2016年12月に米国医師会の学会誌に掲載された米ハーバード大の論文によれば、男性医師よりも女性医師に診てもらったほうが死亡率が低く、再入院率も低い、という研究報告もある。