-- かなり意図して、相当苦労してやってもなかなか出てこない。
『パトレイバー』がまさにそうだったんだけど、日本人の顔を描きたがったのは黄瀬だけだからね。

-- 簡単に言っちゃうと、虚構の中だからこそ日本人の顔を
見たがっていないというのが認識としては正しいと思う。

-- 明治は日本で終わった、明治からあとの日本は日本じゃないって、司馬遼太郎のあれを
宮さんがしきりに言っていたけど、やっぱり日本人が日本人であることを嫌がっている傾向があるんですよ。
大正モダンの頃から、日本人が日本人であることを、どこかで忌避し始めている。
米軍に占領されてどうこうというのはきっかけだったという気がするのね。
本質的にそうだったんじゃないかと思うんだよ、どこかしら。

-- そういう意味でアニメっていうのは絶好の逃げ場だったし、逃げ込み先としては
これ以上いいものはなかったし、またそれを突き詰めていって淘汰しちゃったから、
これからまた本家本元のアメリカで受けちゃったという、非常に皮肉な結末だよね。

ユリイカ1996年8月号の対談から押井守の発言を抜粋。