一方、ガランは事態に戦々恐々としていた
姉が民衆の前に姿を現そうものなら身の破滅
現れなかったとしても、連れ戻すまでの間は霊媒を行う影武者がいないのだ
表向きは悪阻のため公務を休むことにし、必死に捜索の指揮を執る
しかし破滅への恐怖と焦りは、着実に彼女の心身を蝕んでいった
とうとう、ガランは流産してしまう
母体へのダメージも大きく、次の妊娠は望めないだろうと侍医は診断した
だが、ガランにはそれを公表することはできない
世継ぎを産むことも女王の務めである以上、それを果たせないとなれば権威が損なわれる
王家の遠縁から霊力を持つ女子を探すにしても、権力目当てで名乗り出てくる者達との争いになるだろう
そして何より、アマラに逃げられた所為で追い詰められている自身が惨めに思えて仕方なかった
自身が「失敗した」ことを民衆に知られる訳にはいかない
そのためには、アマラの子を奪うしかない
ガランの思いは最早、妄執に近いものとなっていた

……その後の成り行きは、「正史」として伝えられている通り