山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒を振り挙げた。
メロスはひょいと、からだを折り曲げ、
飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その棍棒を奪い取って、
「気の毒だが正義のためだ!」
と猛然一撃、たちまち、三人を殴り倒し、残る者のひるむ隙に、さっさと走って峠を下った。
一気に峠を駈け降りたが、流石に疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに
、かっと照って来て、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、
と気を取り直しては、よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。
天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たメロスよ。
真の勇者、メロスよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。
愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、
と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。
路傍の草原にごろりと寝ころがった。
身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。

   , '          ,ヘ. ト、 、.._  / r‐、ヽ.
  / ./     ,イ/ /`メ.`ヽv::\ \\r 、ヽ       これではならぬっ・・・・・・・・!
. / //     / !' v/ / ,    :::\ \ 、リ l
,'/ / .,イ ,  / l _,/ /!./ /     ::::\.ヽ._ノ       がっ・・・・! しかし・・・・・・・・
.  ! / l ,イ ./、.U \/ l∠.=;-‐   v u:::::\'、         真の勇者、メロスよ・・・・・・・・・・!
  |/ |/ W  `''‐、,, '~U~ 〜′    :::::::|ヽ.   ト.   疲れ切って・・・・・・
           /      u ノ> uj ::::| ヽ   | i     動けなくなるとは
.           / v ‐, j /'´    :::|;   !.   |. !      情無い・・・・・・!
            /   イ   / v   u:::|;;   !   | !
.        / , ‐'´ノ _,/ u      :::|;;  |.  |. !   でも・・・! もう、どうでもいいっっ・・・・・・・・!
          ー''´    ̄  \_/`! u  v::|;;;  |  |  |