深水黎一郎
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10月16日「ジークフリートの剣」 講談社文庫で発売です。 「人間の尊厳と800M」からはいって、すごい面白かったので
以降いろいろ読みあさってる
へぇ〜と思うような雑学も知ることが出来るし、話も面白いし
何かいいんだよな〜 ジークフリートが先になったのは、
ワーグナーイヤー(今年が生誕200年)に間に合わせるためかもね >>7
同意。あれはすごい短篇集だと思う
ところで新作はまだか。
幻冬舎の連載が終わって半年近く経つんだが、まだ出ないのかね。 短編集でないかな。
光文社のが結構たまってるみたいだけど。 大癋見警部の事件簿かw
推協のアンソロジーに載ってるやつは面白かったな 連城三紀彦が亡くなったけど、この人も結構美文調の文章書けるよね。
うんとお下劣なものも書くけどww(『言霊たちの夜』)
連城亡き後、美文とミステリーを融合できる貴重な作家として期待したい。 「ジークフリートの剣」なんでノベルス化しないんだ…
既刊の帯見ても、解説読んでも芸術探偵シリーズの4作目扱いじゃん Twitterを見る限り、このひとは保守派だな。
芦辺、辻、二階堂など左巻きの多いミステリ作家としては珍しい存在だ。 作家はブサヨばっかりだからなあ。
我孫子はもちろんだけど、島荘とかジェノサイドの高野とか。
一方保守は百田とこの人くらいか。 ツイッターの更新が止まっている。
第二の氷川にならなければいいが... もう何年も本が出ていない氷川と、美人薄命が上位ランキング入り確実視されている深水を一緒にするのはさすがに・・・。 フジテレビ韓流抗議デモを支持した作家として延々語りつごうw このミス12位だよ。
ひとけた行くと思ったけどね。 もう順位出てたのか…
うーんもっと評価されても良いと思うんだけどなぁ 長岡や梓アの脚光の浴び方に比べると不遇感は拭えないな 2.近刊案内(2014年2月以降の刊行予定分)
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【創元推理文庫】(国内ミステリ)
◇『人間の尊厳と八〇〇メートル』深水黎一郎著
日本推理作家協会賞受賞作ほか、気鋭が技巧を尽した五編を収める
短編集。 「世界で一つだけの殺し方」 南雲堂 ¥1680 発売中 新刊もさすがの出来でした。
一作目は小島正樹のヤリミスを思わせるトリックの集中砲火。
二作目は得意の薀蓄。だが説明が上手いから読んでいて苦にならないどころか楽しい。
出版時期がアレだが、来年の本ミスに絡んで来るかも。 この人こそ現在自信を持っておすすめできるミステリ作家だと思う。 10冊出して、これは駄作ってのがないからな。
これはなかなか凄いことだと思う。 東京創元社 2/20 創元推理文庫 『人間の尊厳と八〇〇メートル』 深水黎一郎 田母神俊雄@toshio_tamogami
人権救済法案が閣議決定されました。弱者が権力を握ろうとしています。
弱者救済が行き過ぎると社会はどんどん駄目になります。
国を作ってきたのは時の権力者と金持ちです。
言葉は悪いが貧乏人は御すそ分けに預かって生きてきたのです。
「貧乏人は麦を食え」。これは池田総理が国会で言った言葉です。
馬場正博@realwavebaba 12年9月19日
まぁ、「本音」を言うことも必要でしょう反論も多いでしょうが。RT @toshio_tamogami
菊田裕樹/菊P@Hiroki_Kikuta 12年9月20日
同感。(-ω- RT @toshio_tamogami 世界で一つだけの〜読んだけど、なんか、この人段々島荘化してきてないか?w
美人薄命はテーマと直結してたから良かったけど、今回の二編目なんかは色々と余計な様な……
あと、一編目はhowというよりも(一応メ欄)の楽しみのがでかいな
逆に二編目はhowしかないけど、トリックがすぐ見当ついちゃったから音楽蘊蓄しか楽しみがなかった て言うか、今回は意識して島荘風に仕上げたんじゃないの?
監修者だし、不可能と奇想という縛りがあったし。
二編目のハウはプロローグの段階で検討つくけど、
そこからの薀蓄の嵐(しかも読みやすい)が読みどころかな。 >>47
>>46だけど、不可能を可能にするのとか21世紀本格風のトリックとかそういう意味で島荘化って言ったんじゃなくて
社会風刺とか日本人の部分的な意味で島荘化って言ったつもりだった。
言霊と美人の風刺は>>46で言った通り、テーマに直結したネタだったからそこまで気にならなかったんだけどさ。 あーそういう意味か。
自分は特に気にならなかったな。
それに島荘はガチ反日だけど深水は保守でしょ。 >>49
いや、方向性は確かに真逆なんだけど、不要なところにいちいち絡ませてくる鬱陶しさが似てきたかなーって
どちらも作品そのものは大好きなんだけどね なるほどね。ところで深水作品では何が一番好き?
ここ3、4人くらいしかいないかもしれないけど聞いてみたい。 美人薄命が好きだわ
あれはテーマとミステリ部分が物凄く上手く噛み合ってて傑作だと思う 美人薄命はいいねー。
俺はジークフリートの剣かな。
ミステリーとして一番すぐれていると思うのはエコパリだけど、小説として。 言霊たちの夜に一票。
いやマジで好きなんだ。特に鬼八先生www 言霊たちの夜は(深水で一番かはともかく)俺も好きだwww
ラストのとか筒井康隆みたいなことやるなーと思いながら笑った。 エコパリかなあ。
作中作と本文の絡め方が尋常じゃなくうまいと思った。 エコパリのテクニックを先鋭化させたのが美人薄命だと個人的には思っている 両方とも作中作に重要なヒントが隠されているということかな? 美人薄命は3人称による歴史的記述だと思わせておいて、
一人称による語りだったという意味で新しい叙述トリックの可能性を拓いたものだと思う。
それに気が付いて言及した評論家は、俺の知るところ日下三蔵だけだが。 深水先生、艦こればっかりやってないで小説書いてくださいよ ジークフリートの剣は婚約者がメル欄に身を捧げて、
主人公を抜擢して貰ってるのな。
タイトルロールの婚約者が偶然狙われたわけでない。だから悲劇は深い。
才能に惚れ込んだ婚約者が、世間知らずで傲慢で、
そのままではせっかくの才能も生かせず潰れたであろう主人公に、
ワグナー歌手として考えうる限り最高の舞台を与え、
未来の成功を約束するために、自分は犠牲になって身を捧げた。
最高の舞台で共演し思いを叶えたら引退する。
そのための最後のご奉公で、メル欄になるために時間を取り、
結果メル欄ことになったと。
絶対に旅行を取り止めなかったのも、メル欄ため何だよな。
まさかあんなことになるとまでは予想できなかったが。 その視点はなかった。
だがそう考えると、主人公と婚約者が同時に大舞台にキャスティングされるという、
有り得ないほどの幸運も、偶然ではなかったことになるわけか。
うーむ。 そうそう。普通ならタイトルロールの彼女は狙わない。
危険すぎるからな。
逆に考えれば狙ってた女の恋人だからタイトルロールにしてやった。
何だって言うこと聞くように事実なったろうし。 時系列
自分にはない天下を取れる才能の男に惚れる。
↓
小器用な軽い声でごまかそうとする男にワグナーやらせて、
天下取りの足掛かり。以降、実質プロデューサー。
↓
順調にキャリアを積むが飛躍もないまま数年。
一気に道を開ける力持つバイロイト祭仕切ることになる大物と会う。
↓
親は男を連れてこい。いないなら見合いしろ。孫を見せろ。
男は見合いすれば?僕以上の金持ちに会い幸せになれるかもしれないよ。
↓
占い。私の考えてることは恐ろしいことだし、裏切ることでもある。
また不実なこの男についていっていいのか。普通の幸せのがいいのか。
答えの出ない揺れる女心。
↓
近いうちに幸せの絶頂で死ぬことになるとのお告げ。
↓
例えそれがとんでもないことでも私は男が夢を叶えるところが見たいんだ。
それが私の幸せの絶頂なんだ。 時系列の続き
魂を売る代わりに悪魔に魔法を要求。
↓
男がプロポーズ。しかし、受け入れるわけにはいかない。
汚いことは女の私がやって何も知らない男を救ってやらないと。
女の愛が世界を救う。ワグナーのテーマ。
↓
悪魔がバイロイトでジークフリートという魔法をかなえてくれる。
↓
もう大丈夫だ。これで未来は約束された。婚約。
↓
今の悲しみも孫にはおとぎ話として聞かせてやれる。
↓
バイロイトで共演。これで私も引退。最後の悪魔とのサバトはあるが。
↓
私は幸せの絶頂だ。
↓
暗転。 何か読んでたら震えて来た。すごいなお前。
すると全てのシナリオを書いていたのは有希子ということか。
作者本人に訊いてみたいな。 文庫の六十頁くらいのとんでもないことをしてるのではないかとか、
単なるエンゲージブルーということはありえないんだよな。
好いた男が望み通りに前途が開けたところの婚約なんだから。
浮気の恐れくらいじゃない。
信用できない語り手で大きな嘘を隠してて。
婚約者パートの暗さは必ず深い原因がある。占いの場面の暗さとか。
何でそこまで思い詰めてんだと。
元々大きく飛翔させようと尻叩いてたんだから、
その飛翔の裏に人に言えない原因が隠されてる以外考えられない。
そして中休みにバイロイト離れねばならなかった理由も、
それを口実に時間を作るため以外に考えられないしね。
後はリハーサル本番でそれどころじゃなくなる。
馬鹿で無垢で世間知らずで幼稚で身勝手な男を、
女が現実の汚さ怖さ全て引き受けて、女の大きな愛で包んで守る。
最後は鍛えるばずのギンギンに勃起させないといけない浅ましい、
男性器の代わりに女の骨が立たせてやり面目施し火に包まれる。 まあ、作者がネタを割るわけもなく、
作中の真実は一つに縛られるわけでもなく。
しかしこういう読みもできるという、そこまで計算してる、
作者の謀みの深さには脱帽する。 普通なら自分が見いだし振り付けしてやった男が予想通り、
世界の檜舞台を踏もうとしていて、その男から求婚されてる。
どや顔で鼻高々で突き抜けるくらいじゃないとおかしいのに、
男のためならどんな犠牲も私は構わないと言うのは、
実際犠牲になってるってこと何だよね。
世界的演出家と交流あるなら喜ばしい限りであるいは性的関係があり、
婚約者がいて浮気してるのがバレたらヤバいにしても、
そんなに暗くなることではない。
口にはできないはばかられる状態を受け入れていたということ。
女の深い悲しみと対比的に男の呑気な日常が描かれ、効果出してる。
悲劇深めてる。 神泉寺が真相を暴いたあと、テノール歌手に、
「もうこの話をお互いにするのはやめましょう」というシーンがある。(文庫版361p)
俺はここがずっと引っ掛かっていたんだよね。何で? 別にいいじゃん、とね。
でもf4LVyJieの説明を聞いて納得したわ。
これ神泉寺も有希子の正体見抜いてるね。
だけどそれが和行に知られることは有希子は死んでも嫌に違いない。
だから神泉寺は「ゼーレンセンとは何食わぬ、顔で今まで通り接してください」と言っている。
そしてあのラスト。最後まで和行は何も知らないまま、女の愛によって救われる、と。
まあ裏設定なんだろうけど、鳥肌もんですな。 有希子は一緒に食事しながらプレゼントもらったんだよね。婚約者から。
その後、メル欄される為に出かける前に。
そしてそれが事件解決の決め手になる。
どんな気持ちだったか。男には推し量れない。
男の方は意識的には何が起こったかは言葉では把握してないけど、
(天然でそれで構わない天才だから)
でも無意識の中では理解してて、自分がどんなに酷いことを、
彼女に強いていたのか、してしまったのか、うっすらとはわかっていて、
喪に伏している感じかな。 話切り替えて。
従来のオペラは美男美女大物天才悪党、エゴの塊、
ドン・ジョバンニじゃないけど、地獄に落ちたって悔い改めない、
現実離れした人間の大立ち回りだから面白いとされてたけど、
トスカの台本作者とプッチーニはそれを脱構築したと言うのが、
トスカの新演出の話だよね。
自由の闘士に、堂々と自己主張する美女。
体制派だが切れ者の悪の権化。
そういうエゴ尖らした人間たちの葛藤のドラマだと思われてた。
従来のオペラみたいな。
しかし、そう考えると歴史に残る革命家でもないし、警察署長では、
微妙にキャラが弱い。わざわざ取り上げる程の存在ではない。 続き
革命家や美女や切れ者のような分かり易い存在がドラマの主役じゃなく、
実はそれらの影に隠れ自分は悪くないかに装いながら、
巧妙に悪をなし、己の欲望を通す私達と等身大の卑小でリアルな悪こそ、
本当に恐ろしいことをして我々を苦しめ破滅に追いやるとの現実。
しかし、それを描いてるのは作中で批判的に言及された、
オセローのイアゴーのが早いんだよね。
あのシェイクスピアの台本虚心に見れば、真の主役は、
高潔の士だったのに、信じられなくなり破滅したオセローではなく。
破滅に追いやり世の中の正義や美徳など何の価値もないと思いのままに、
破壊するイアゴーが主役でもない。
その思いのままに見えるイアゴーが実は妻がオセローと、
不倫しているとの疑念に苛まれだからこそ美徳を壊し、
高潔の士を破滅させずにはいられないんだが、それこそ独り相撲で、
イアゴーこせその卑小さからは逃れられず破滅してしまう。
ラスト美徳や大きな悪とかの大きな物語、ドラマではなく、
人間的な卑小な部分でこそ人間は道を誤り破滅するというテーマは、
実は舞台前方のオセローと共に何もしゃべらず繋がれている、
イアゴーとの二重唱であり、そして絶唱を歌ってるのはイアゴーなんだよ。
完全に主役はイアゴーでそう演出しないといけない。
ヴェルディはそこらへんわかってないし。
深水さんもわかってないでその点は浅い。 一般のオセロー理解はオペラばりの高潔と悪の大物の巨人対決だけど。
高潔の士のオセローが美徳を失い破滅することがテーマではなく、
悪の天才、イアゴーがあらゆる美徳を破壊させることがメインでもなく、
悪の天才であるかにうそぶくイアゴーが実はあまりにも普通な、
嫉妬や疑心暗鬼で見当違いの完全に間違った意味のない過ちを、
冒し続け破滅する、我々の現実と陸続きの、
そのあまりの卑小さ、悪のみみっちさとどうしょうもなさ、
我々の悪の本当のその素性隠しきれない真実が問題で。
トスカにはるかに遠く先行している。 まあ、虚実被膜、どこまで誇張し、ありえないことや嘘を紛れ込ませるか、
反対に真実らしさを整え、読者の日常に引きつける描写するかは、
フィクションである限り永遠の課題だけどね。
荒唐無稽なタイプのオペラの現実離れしたキャラの誇張された言動も、
その中に人間の一面の真実が、出ているから人は楽しむんだし。 深水さん、オペラもいいけどバレエの薀蓄でミステリを書いてくれないかなあ。
バレエは所詮おとぎ話だから無理か… 藤枝和行は不思議な人物で探偵としても凄くて、神宮寺と同格なんだよな。
トスカでは真相にいち早く気付いて。
海埜や神宮寺が馬鹿だから、事件解決が遅れた。
藤枝の指摘してた件を潰してればとっとと事件は収束していた。
ジークフリートではあれを気づけ推理しろと言うのが無理で、
神宮寺は反則。物語のご都合主義。
藤枝が自力で探偵やる番外編があっていい。
歌手としては、自分を最高の楽器として維持できる天才。
プロフェッショナル。 そういう天才が、自分や自分の身の回りに起こっていることに、
全く無知で白痴に近い盲目というのがドラマとして面白いんだけどね。 トスカでジークフリートの事件予告して。
ジークフリートで美人薄命の謎の境涯予告して。
他にそういうのってある? 瞬一郎も微妙にへぼいキャラ、へぼい探偵役で。
確かにものすごい知識量で素人を黙らせる力はあるが、
所詮はアマチュアのディレッタントで。
音楽のことは音楽家にはかなわない。芸術のことは芸術家にはかなわない。
世界的演出家にはオペラの解釈ではかなわない。
オペラハウスでの殺人事件ではオペラ歌手に推理ではかなわない。
探偵としては二流。芸術愛好家としても二流。
どこまでいっても専門家にはかなわない愛好家にすぎないが、
死体現象だ象の生態だ。普通に生きていれば絶対役立つことはないだろう、
無駄な知識蘊蓄で読者を楽しませ想像できないところに連れてく。
そしてミステリーとはそういうもが大切だと肝心なことを教えてくれる。
天才芸人。エンターティナー。 >>84
この作者のことだから、こっそり何かを仕込んでる可能性はあるよな。
俺が驚いたのは美人薄命(2013)の老婆の名前が、
ジークフリート(2010)の中に既にちゃんと出ていること。
つまり作者は2010年の段階で、
あの五十路さんの辞世の句のトリックを考えていたことになる。 >>85
名探偵が何か一つの専門家になってしまうのは良くないだろ。
ホームズも御手洗も無職みたいなもんだ。
(御手洗はのちに脳科学の専門家みたいになって逆につまらなくなった。)
瞬一郎がプロのヴァイオリニストとかだと、やはり活動範囲が限定される。
そこで考えられたのが、FXで食っているという現代的な設定なんだと思うよ。 御手洗は脳科学の専門家とか言っときながら、
言ってることは利根川、立花の対談本の丸写しだからね。
島田荘司のしょぼさには笑った。
ただ御手洗は探偵としては神だし、島荘もほんまもんの天才だ。
神宮寺はアマチュア芸術愛好家としても探偵としても二流何だよな。
そしてそれがいい。
推理とは殆ど関係ない有効性は大してない、
蘊蓄で読者を楽しませるのが彼の神髄。 で神宮寺は面白い魅力的な名探偵だし、
深水は次代を背負う推理作家だし大好きだ。
ジークフリートは掛け値なしの傑作だけど、一言言いたいところがあって。
ジークフリートの剣で指輪論として、ブリュンヒルデの自殺は、
ワグナーがキリスト教徒なのに、云々のところがあって。
だけど、ロミオとジュリエット。トリスタンとイゾルデ。ウェルテル。
心中物が一つのジャンルとして成立し日常的に事件も起きる、
日本はおかしいにしろ、西洋だって文学の主題としても現実にしろ、
自殺は珍しくもないし、ましてワグナーはロマン派ど真ん中。
また、恋する相手に先立たれて残った片割れが、
いつまでも生きて年老いましたではリアルだけと、ドラマになんない。
普通の物語のお約束でも不思議じゃないし、
あそこまでぐだぐだ積み上げ続けた物語。
最後は派手に世界自体全部壊しご破算にしないとカタルシスもくそもない。
当たり前の展開でとてもじゃないが熱弁振るうところじゃないし。
むしろ死なない、世界が壊れなかったら逆に驚く。
神宮寺も深水も馬鹿なんじゃないかとしか思えなかったりする。
そういう間抜けなところも含めてスパイスだけどね。
外れ感、ぐだぐだ感が神宮寺の外れ気味のボールと調和して、適度な荒れ玉。
その推理の組み立てと合わさり読者を三振させる。
絶賛してるんだからねw そういう荒れ球だってことは作品構成の結構核心的なところだとも思う。
藤枝和行は神宮寺をしのぐくらいの名探偵で、プロフェッショナルな、
自分を楽器として最高に保つことに全てを捧げる天才だけど。
同時に有希子の気持ちも知らずに、自分はキャリアの当然の結果として、
裏に何もなしにバイロイトでタイトルロールが来たとうぬぼれてたり。
これから恋人が複数の人間相手にメル欄されるために出かけるのに、
全く何も気づかずに昼飯呑気に食ってたり、
彼女にどんなことがあってもこの男は自分で道を開ける、
余計なことせず黙ってついていけばいいとの信頼を与えるほどではない。
だけど天才。
人間とはそういうものだし、そのリアルさが深みを与えてるからね。 藤枝和行にしろ天才ではあっても、恋人の無念を独力で払って、
不当な世界の鎖を引きちぎる、世界をぶち壊す英雄ではない。
二流の天才。
あれが独力で謎を解き更にその底の悲劇を導き出し、
雄々しく立ち向かったら別の作品になる。
深水の作品には一流の天才は出てこない。英雄はいない。
アマチュア。ディレッタント。
世界は壊れない。世界は壊さない。
世界への視点はどこか冷めて受け入れている。
それが個性で。
ホームズや御手洗はどこか探偵なのに世界をぶち壊すんじゃないかとの、
ただ推理して世界を再構築してるはずが、世界の約束事、
秩序を壊してしまうんじゃないかとの危うさがあるし、
クイーンなんかには英雄じゃない自分への諦観の果てに、
逆説的に世界を壊すカタストロフがある。
そしてこれは言うまでもないがどれがより上と言う話でもないし。
美人薄命とかは英雄を書けない深水が、
クイーン風のカタストロフを狙った作品かもしれないとも思う。 いま手元に本がないので確認できないけど、
あれって自殺じゃなくて遺体が火葬になることが問題なんじゃなかったっけ?
北欧神話ではブリュンヒルデは火に飛び込むけど、
キリスト教の影響を受けた12世紀の「ニーベルンゲンの歌」ではブリュンヒルデはそうしない。
深水が完全無欠な英雄を描かないというのには同意。 というか、完璧なヒーローを描く方がずっと易しいでしょ。
紙の上ならばいくらでも完璧にできるわけで。
人間的な欠点がある主人公を描く方が難しいよ。 ここらへんで一旦集計しておくか。
深水作品で一番の傑作は?
美人薄命 2票
ジークフリートの剣 2票
花窗玻璃 1票
言霊たちの夜 1票
エコールドパリ殺人事件 1票
大べし見警部の事件簿(未刊行)1票
予想通りバラバラやね。ww
投票は随時受け付けてということでよろしく。 一番の傑作とは言えないかも知れないけど、
「世界で一つだけの殺し方」は、一番最初に読むにはいいかも。
深水ミステリーの楽しさがいっぱい詰まってる。 少なくとも本格ミステリー大賞の候補にはなってしかるべきだよな。
デビュー以来のテーマである「信用できない語り手」の技法を先鋭化させて、
それに物語性を融合しているからね。
教場やノックスマシンよりはずっとミステリーしていたよ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています