うーん、岩清水君。これただの自殺じゃないかもしれないね」

とある神社の本殿の中央で吊られている神主の遺体を前に鶴幡警部補と岩清水巡査が事件について話をしている。

「えっ、鶴幡さん?どう見ても自殺にしか見えないのですが?」
「パッと見はね。ただ、足元を見てごらん。」
「んっ、何だこの紙は?」

紙が1枚落ちていた。和紙に筆で「天誅」と書かれていた。

「復讐鬼の仕業だな。」
「えっ、それ最近世間を騒がせている連続殺人犯じゃないですか。」
「そうだ。10年前にとある学生の自殺事件でイジメを行っていたとされ、後の裁判で無罪放免となった5人の同級生の内の4人がすでに吊るされ、同じように『天誅』と書かれた紙が遺体に添えられていたわけだ。」
「という事は、この神主もてすが?」
「ああ、そうだ。だから今回も自殺と断定するのはちょっと待った方が良いかもね。」

「鶴幡さーん、奥の控え室にこんな書き置きが。」

現場検証をしていた巡査の1人が被害者の書き置きを鶴幡に手渡した。

「んー、何々。えっ、これは?」

「私の命を狙う者はこの中にいる。それは宮本、大木、西川だ。」

「この3人は何者だい?」
「それぞれの関係性を概略まとめてあります。」
「アハハハハッなるほど、岩清水君分かったよ。復讐鬼の正体がね。」
「えっ、もうですか?そんな、嘘でしょ?
「というわけで裏を取りたいから、ちょっと『あの人』について確認行って来るわ。」
「ちょっ、ちょっとー、鶴幡さーん」

困惑した顔の岩清水を尻目に、鶴幡は本殿を出て行った。