>>673 つづき

免疫染色は特定のタンパク質に結合し、特定の色で蛍光する抗体を使用します。
両研究チームは、新しい神経細胞の中に多く存在するダブルコルチン(DCX)と
PSA-NCAMという2つのタンパク質に着目しました。両研究チームは、これらの
タンパク質が、脳の海馬で新しいニューロンの生成を補助していることを確認しています。

アルバレスブイヤ博士とソーレス博士は、若い神経細胞の指標としてDCXとPSA-NCAMを
使用し、出生前および乳児の脳における神経発生を図示することで、神経細胞が生後1年で
急激に減少することを示しています。また、脳の海馬で発生した最後の神経発生は13歳で
あったとのことで、これは「成人の脳は新しいニューロンを生成しない」という、過去の考え方を
裏付けるものになっています。しかし、ボルドリーニ氏とヘン氏は79歳まで、若い神経細胞の
兆候があったことを示しています。

2つの研究結果が発表されることで、「両研究チームは同じアプローチを採用したにもかかわらず、
なぜ矛盾した結果を導き出したのか」ということが議論されることとなりました。この違いを生み
出した原因の1つとして、アルバレスブイヤ博士とソーレス博士らが使用していたサンプルは
死後48時間までのものだったのに対し、ボルドリーニ博士とヘン博士が使用したサンプルは
死後26時間までのものだったことが挙げられています。ラットの研究によると、DCXは死後
数時間以内で分解されることが示唆されており、この違いが異なる結果を示した可能性を
指摘されています。

また、両研究チームは免疫染色を使用していますが、その調査方法が異なることを指摘
されています。ボルドリーニ博士とヘン博士らの研究チームの場合、調査対象が10代の
若者と大人のみでした。このため、アルバレスブイヤ博士とソーレス博士が確認した
「生後1年で大きく減少する」という変化を確認することができなかったことが、異なった
結論が導き出された原因になったと考えられています。

(つづく)