夜になり、ようやく撮影が終わった。急いで控え室に戻り、リュックからスマホを取りだすと、美月さんからのLINEが来ていた。
かなり待たせてしまった。
8時に待ち合わせをしていたのに、もう9時を回っている。
僕はジャンパーを着込み、スタジオの皆さんに挨拶をして、足早にスタジオを後にした。
新宿の夜の街は、相変わらず汚い大人達であふれている。
歩きタバコの歯の抜けたジジイがふらつき、悲哀なスーツの集団が酒に酔いふざけ合っている。
大通りを外れたひときわ静かな暗い路地を歩くと、ゴミ箱の中から、帽子を深く被った謎の男が現れ、
恐ろしい奇声を発しながら、目の前にエロ本を差し出してきたりする。
やはり秋元先生の書く詩の通り、この世は汚い大人ばかりだ。
僕が信頼できる大人は、おそらくこの世界に一人も存在しない。
僕は指先で前髪をいじりながら、美月さんの待つ新宿東口へと向かっていた。
道ゆく女の誰もが、通り過ぎる僕に振り返る。彼氏を横に連れている女も同じだ。
みんな僕のことを見て、目を丸くし口を薄く開け、妊娠でもしたかのようにうろたえる。
僕は少なくとも、現代の10代の若者のなかで一番モテている。
バカな男の学生などは、失礼に指差しなどして、「あっ!サイレントマジョリティーだ!」とか意味のわからかい日本語を叫ぶ。
そのたび笑顔で手を振るが、誰も僕が軽蔑的な心を持ってるなんて気づきやしない。
そんなことを考えているうちに、僕は東口についた。
安物の服を着た学生たちや、孤独なサラリーマンたちが、ガードレールに寄りかかって、
スマホにうつむき光で顔を照らされてながら誰かを待っている。
どうせ5chで誰かを叩いているネット住民の彼らは、全員ネット中毒で、
この場所で欅坂46の平手友梨奈と乃木坂46の山下美月が落ち合うなんて、夢にも思っていないだろう。
彼らもまた、二人セゾンの歌詞で秋元先生に皮肉られてるゴミ人間なのだ。
向こうに手を振っている女性が見える。あれは美月さんだ。


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