しかしこの身近さ、つまり平凡さによって叶えられた成功が、彼女を「アイドル」に縛り付けているわけではないようだ。新内眞衣を「アイドル」に縛り付けているもの、それはおそらく、執着心である。
ひとりの少女を仔細に眺め、イロモノや端役にしか見えない、と落胆するのは鑑賞者の独りよがりな感想に過ぎず、アイドルの暮らしをおもいがけず入手した少女からすれば、奇跡の階段をのぼり続けることは、まさしく「夢」なのだ。
人は、様々なものに執着心を抱くが、夢に対する執着ほど握力の強いものはほかにあるまい。とくに、一度手に入れたもの、所有したものを手放すことほど耐えがたい苦しみはない。
また、執着と満足は違う。凡庸であればあるほど、叶えた夢に満足するのではなく、執着する。なによりも、執着は復讐心を生みやすいのだ。