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元サッカー日本代表のストライカー、高原直泰(43歳)。沖縄でクラブを立ち上げ、選手、指導者、そして経営者を兼務する彼がいま熱心に取り組んでいるのはコーヒー栽培だった。現地で本人に話を聞いた(全2回の1回目/#2へ)。

やってきたのは”農家の高原さん”だった。

「いい感じに育っていると思いますよ」

コーヒー畑にやってきたサッカー元日本代表の高原直泰は、朝に降った雨で地面がぬかるんでいると見るや、すぐに車に積んであったマイ長靴に履き替えた。3年前、苗木を植えた時には買ったばかりだったはずの長靴は、乾いた土がこびりついていい感じにくたびれた様子になっていた。

ハイビスカスを防風林にした約3000平米の畑には等間隔でコーヒーの木が植えられていて、元気に育ったものは181cmの高原と同じぐらいの背丈で剪定されて枝を広げている。そこに小さな実が連なる。

 まだ青く未熟な果実を大事そうに手に乗せながら、高原はスマホで写真を撮っていた。眺める視線が優しい。

元サッカー日本代表のストライカーが2015年に立ち上げた沖縄SV(エス・ファウ)、そのクラブが手がけるコーヒー農園が沖縄県名護市にある。

大規模な国産コーヒーの栽培を目指して『沖縄コーヒープロジェクト』が立ち上がったのが3年前。琉球大学やネスレ日本と連携しながら、耕作放棄地や農業従事者の減少という問題を解決し、沖縄に新たな産業をつくり上げる。同時にクラブがより地域と密接に関わって生きていこうという取り組みでもある。

海からほど近い名護の高台に苗木を植えて3年が経ち、今年の冬にはようやく初めての本格的な収穫を迎えられる。潮風が吹きつけるこの場所は、世界でも例がない塩害の危険性をはらむコーヒー畑だという。あえて過酷な環境でのチャレンジではあったが、5月に東京で行った進捗状況の報告会見では収穫したコーヒーの試飲ができるまでになっている。

我々が取材に訪れた6月中旬のこの日は、試飲を終えた高原を囲む沖縄メディアの取材日だった。

 ところが、喜びの声が聞けるものとばかり思っていた地元メディア(と東京から出向いた我々)は肩透かしを食らうことになった。

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