「世界のタレントを獲得するという大きな目的に沿った施策。新型コロナ禍で海外から日本に来てもらうのが難しくなったのもあり、技術開発拠点の開設を決めた」。こう語るのはメルカリの木下達夫執行役員CHRO(最高人事責任者)だ。

 同社は2022年6月23日(現地時間)、インドのベンガルール市に技術開発拠点を開設した。ソフトウエアエンジニアをはじめとした技術系人材を中心に、今後1年間で50~60人を採用する。メルカリの日本国内向け事業や米国事業のシステム開発に携わる予定だ。

 「GAFA」をはじめとする世界の巨大テック企業に負けじと、日立製作所や楽天グループといった日本のテック企業が相次いでインドに進出している。グローバルでのIT人材獲得に最も熱心な1社のメルカリも続いた格好だ。

 これまで世界中からIT人材を集めていたメルカリ。東京オフィスのエンジニアリング組織の約半数が外国籍という。今回のインド拠点の開設で、来てもらうだけでなく自ら積極的に採りにいく姿勢を打ち出した。

 現地での人材獲得競争を勝ち抜くため、報酬については「ナンバーワンと言えないまでも、競争力がある水準を提示する」(木下CHRO)。具体的な額は非公表だが、現地の相場を調べて平均以上の金額とする方針だ。「日本のIT系企業の現地拠点やGAFAなど、採用上の競合を見据えて報酬体系を設定する」(同)。

 採用と表裏一体の取り組みが、入社した人材の定着だ。メルカリが採用を目指すのは「GAFAからも声がかかるような人材」(木下CHRO)である。GAFAが狙いを定める可能性があるのはもちろん、メルカリに入った人材自身もキャリアの先行きにGAFAなどを候補に考えていても不思議ではない。競合が放つ引力に負けない魅力を打ち出し続けるのは、容易ならざる道だ。

 人材の採用と定着へ、同社がとりわけ重視するのが企業として目指す世界観を示した「ミッション」と、達成に向けた行動指針や原則を定めた「バリュー」、それぞれの理解と浸透だ。一例が「Go Bold(大胆にやろう)」。前例にとらわれない大胆なチャレンジを推奨する、バリューの1つだ。

 同社は採用の面談時にミッションとバリューに共感してもらえるか念入りに確認する。入社後の人事評価の場面でも、バリューに基づいた行動や考え方の実践度合いを成果と両輪で評価する
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