安倍晋三元首相(67)が奈良市内で演説中に銃撃されて死亡した事件で、安倍元首相の後方の警護を担当していた警察官が「道路を走る自転車などに気を取られ、容疑者に気づかなかった」と奈良県警などの調査に説明していることが捜査関係者への取材で判明した。1発目が発砲されて初めて山上徹也容疑者(41)=殺人容疑で送検=の存在に気づいたという。警察庁は警備の問題点などを調査する「検証・見直しチーム」を発足させ、くわしい経緯を調べている。

 捜査関係者によると、安倍元首相は近鉄大和西大寺駅前のガードレールに四方を囲まれた場所で演説をしていた。ガードレール内には警視庁から派遣されたSP(セキュリティーポリス)を含む4人の警察官がおり、うち1人が後方を警戒する担当だった。

 山上容疑者が安倍元首相に近づいた際、後方担当の警察官は道路を通り過ぎる自転車などを注視しており、発砲音がするまで、銃を構える山上容疑者に気づかなかったという。

 警備にはSPのほか、奈良県警の数十人の警察官が当たっていたが、大半は聴衆の多い前方を警戒していた。演説をする安倍元首相の後方では車や自転車が常に行き来しており、演説する場所がそもそも悪かったとの声も警察内部で上がっている。

 警察庁の「検証・見直しチーム」は現場で警備を担当した奈良県警や警視庁のSPから聞き取り調査を進め、8月中に対策案などをとりまとめる予定。