共産党創立100年 「現実路線」はいばらの道 自衛隊「活用」掲げても他の野党から距離置かれ…

 共産党は15日、創立から100年を迎えた。節目の年に臨んだ先の参院選では党綱領に基づき、違憲の存在としている自衛隊を当面は認め「有事の際には活用する」などの見解を積極的に発信。「現実路線」で支持拡大を目指したが、改選議席を割り込み低迷した。反転攻勢を期すが、野党共闘路線は他党から距離を置かれ、道のりは険しい。(金杉貴雄、山口哲人)

◆参院選、目標に遠く及ばず
 就任22年となる共産党の志位和夫委員長は14日、国会内で記者会見し「どんな困難のもとでも、決して国民を裏切らず、社会進歩の大義を貫く不屈性。党の100年を貫く特質だ」と胸を張った。だが、参院選では困難に直面した。
 改選は比例代表5、選挙区1の計6議席。比例650万票、得票率10%以上の目標を掲げ「5議席の絶対確保」と選挙区での上積みを目指した。結果は比例が361万票余、得票率6.8%と遠く及ばず、獲得は3。選挙区と合わせ4議席と勢力は後退した。
 党は選挙後に強気の総括を出すことも多いが、今回は投票翌日に中央委員会常任幹部会が「責任を深く痛感する」との声明を出すほどショックを受けていた。
◆綱領を前面に押し出したが…
 「共産党の綱領そのものが1つの争点だ」。参院選前の4月、志位氏は党の憲法ともいえる綱領を前面に押し出した。
 背景にはロシアのウクライナ侵攻があった。防衛に対する国民の不安が高まり、党が安全保障政策で「現実的な考えに立っている」と説明しないと、無党派層の支持を得られないとの危機感の裏返しとみられる。
 力を入れたのが自衛隊に関する説明だ。共産党は、戦力の不保持などをうたった憲法9条と矛盾し、違憲とするが、2000年に「段階的解消」を打ち出し、当面は認める方針を決定。綱領にも反映させた。
 志位氏は「存在する自衛隊を国民のため『活用』するのは当然だ」と実力行使の容認にも踏み込んだ。党はホームページに特設コーナーを設け、志位氏も安保論を説明する小冊子を出版するなど発信を強めた。
◆若者世代の支持獲得に希望
 だが、自衛隊の活用論には野党からも「一貫していない」(国民民主党)などと疑問の声が上がった。
 日米安保条約については綱領に「廃棄」を明記。参院選でも主張を貫いたが、外務省の世論調査(19年度)では日米安保体制を「評価する」が68.9%に上り、現実路線が十分に浸透しなかった可能性もある。
 野党共闘路線も厳しさを増している。16年と19年の参院選で一定の成果を上げたが、立憲民主党は昨年の衆院選敗北を受けて距離を取り、今回は両党が協力を限定的にとどめた。
 共産党は、衆院選では1979年に過去多の39議席を獲得し、参院では98年に非改選と合わせ23議席まで積み上げたが、今はそれぞれ10議席と11議席。党員数は90年の約50万人をピークに、現在は30万人を割り込んでいる。
 志位氏は「党を伸ばすことが野党共闘の力にもなる」と地力を付ける必要性を強調。「青年組織は昨年秋以降、1000人以上増えた」と若者世代の支持獲得に希望