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毎日新聞 2022/10/5 10:30(最終更新 10/5 16:18) 2434文字

 令和の世で、原始的なあの道具が、じわり人気なのだという。山から切り出した木を削った「こん棒」。都会の展覧会では若い女性が大声を上げて振りかざし、インテリアグッズとして売れていく。世界初?の競技大会まで開かれるという。仕掛け人は、大阪から奈良の山里へ引っ越した一人の青年だ。聞くと、木の棒にさまざまな思いを込めたようで。

 奈良県宇陀市の農林業、東祥平(あづましょうへい)さん(31)。大阪府富田林市出身で、関西大在学中に魅了された農業で生計を立てようと、2015年に奈良へ移住した。こん棒にはまったきっかけは21年、山林整備の仕事を手伝い、直径約10センチの木の切れ端を持ち帰ったことだった。

 生活用具に加工しようかとも思ったが、小さすぎて何も作れない。とりあえず削ってみたら、こん棒ができあがった。冗談のつもりで大阪市に住む友人にプレゼントした。「めっちゃ、面白い」。まさかの大ウケ。友人らと展覧会をと盛り上がり、東さん宅に集まり、出品作をこしらえることになった。
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