■メンタル不調の7割は、上司が原因

私が携わったメンタル問題の個別ケースについて、上司―部下関係を調べていくと、「部下に原因がある」「上司に原因がある」の2つがあり、まれに「上司と部下、双方に原因がある」という場合もあります。

これまで多くの会社を観察してきた例を振り返ると、部下に問題があって不調になってしまうケースは、全体の3分の1程度です。そして残り3分の2、つまり7割近くは上司が抱える問題によって引き起こされています。

この話をすると、こんな反論が聞こえてきます。

「部下に問題があるケースが、そんなに少ないはずがない。仕事ができない社員、甘えた社員は非常に多い。何でも上司のせい、会社のせいにしていては、部下を甘やかすことになって、問題の本質的解決につながらないのではないか」

こうした発言をするのは、多くが経営者、あるいは管理者の立場にいる方々です。では、部下側に問題があるとして、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。

実際にメンタル不調になった方から話を聞くと、自身のスキルや経験の不足によって仕事がうまく進められず、自らを追い込んでしまうケース、さらには本人のキャラクターにより職場や仕事にうまくなじめず、周囲から孤立してしまっている状況などが原因になっていることは、確かに少なくありません。

この場合、上司から見れば、「何度教えても仕事を覚えない」「少し指導しただけで、必要以上に落ち込んでしまう」「周囲と打ち解けようという意思がない」といった印象となって胸に刻まれるのは間違いないでしょう。

スキル不足、コミュニケーション不全などによって、同僚の負担を増やしたり、職場の和を乱したりして、周囲の人に「なぜ自分たちが、あいつのフォローまでしなければいけないのか」という思いを抱かせる事例は数多くあります。

ただし「部下の問題」は、職場全体を機能不全にすることはあまりなく、影響の大きさという意味では非常に限定的です。