>>812
 ロックの國民主權論は英國では決して定着する縡は無かつた。
其は此の權利章典と王位繼承法{正式名稱は「王位を更に限定し、臣民の權利と自由をよりよく保障する爲の法律」(1701+660)に據つて、
國民が國王を選ぶと云ふ縡が永遠に禁止される縡になつたからであり、國民が王位の繼承に就いての「世襲の義務」、
詰り王位の世襲を維持し擁護しなければならない義務を負擔する縡と引換へに、國民は自己の自由と權利、財産の相續とを保障されると云ふ權利、
詰り「世襲の權利」を享有出來ると確認されたのである。
則ち國王の地位の世襲と其の分限とも國民の地位の世襲と其の分限とは何れも祖先から子孫へと代々世襲(相續)された自由と權利と義務であるとする
「世襲の法理」に據る國體護持の理念が定着し、斯くして英國は「主權」概念を退けて今日に至つてゐるのである。