【熊本水害 川辺川ダムの危険性が明らかに】 京大教授

全国で77人もの死者を出した令和2年7月豪雨、「川辺川ダムがあったら被害は何倍にも拡大していただろう」、元・防災研究所所長の今本博健・京都大学教授(河川工学)が語った。

「ダムが水害を拡大する典型例は緊急放流。18年の西日本豪雨でも愛媛県の野村ダムが緊急放流を行い下流域に大きな被害をもたらしました。
 今回の人吉地区のピーク流量は毎秒8500トン。もしも川辺川ダムがあったら今回も緊急放流によって下流域での被害拡大と逃げ遅れを招いた可能性が非常に高いのです」

実際、球磨川水系では過去にも市房ダムや瀬戸石ダムによって大規模な水害がもたらされた経験がある。
地元住民のダムに対する不信感は根強い。

「ダムが防災の役に立つのは様々な条件が重なった場合に限られます。
 それなのに球磨川では、国が『ダムありき』の姿勢だったために河川整備計画が策定されていませんでした。
 全国の一級河川109水系で整備計画が策定されていないのは球磨川だけです」

「一般的には、ダムで『堰き止める』よりも『流す』対策をする方が効果的に水害を防止・軽減できます。
 なぜなら、ダムによって水害が防止できるかどうかは不確実だからです。
 球磨川も、ダムにお金をかけるよりは川の土砂を取り除いたり既にある堤防を維持する努力をした方がよいだろうと思われます。
 国交省は川辺川ダムを完成させるのに1100億円かけても10年はかかると見積もっていますが、河道整備なら1mあたり100万円で始められ、今すぐにでも治水効果が期待できます。
 これから10年の水害を確実に小さくするために頼りになるのは、ダムではなく河道整備だということです」