「平成の八つ墓村」と報じられた村の本当のすがた ウェブから火がついた「つけびの村」が本に
文:宮崎敬太
https://book.asahi.com/article/12743333
苦肉の策だったnote版「ルポ『つけびの村』」

 保見の自宅の窓には外から見えるように、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という意味深な川柳が貼られていました。
彼は村八分にあっていたのだ、という報道も加わり、金峰は「平成の八つ墓村」とも呼ばれるようになりました。
『つけびの村』で事件ノンフィクションの新しい形を提示した著者の高橋ユキさんに、取材や執筆の経緯などについて話を伺いました。

――高橋さんが噂話を徐々に集め、丹念に検証すると、まったく想像だにしなかった金峰が見えてきました。個人的には、諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズを読んでるような感覚でしたね。

 それは最初に「夜這い」という民俗学的な切り口で取材の依頼があったからだと思います。
ただもともとは保見を主体にした内容にするつもりだったので、いま形になっているような、ある種私が狂言回しの役割を演ずるルポルタージュの体裁にたどり着くまでには、何回もコンテを練り、書き直しました。

――『つけびの村』がもっとも印象的だったのは、日本の閉鎖的なムラ社会を描いているようで、実はこれが日本の近未来に思えたことです。
今日本人にはどんどんコミュニティがなくなっている。ある人は仕事で病み、ある人はSNSで噂話をする。都会だろうが、限界集落だろうが、そういった人たちに共通するのは、本質的に孤独だということ。
そのリンクを高橋さんは執筆時に意識しましたか?