中国人は驚くほどの忍耐づよさで、思考波の力を増しもせず、そののろいテンポをはやめもしなかった。
彼は一分一分と根気よくそれを維持しながら、原子噴霧器から原子霧をふりまくように、広大な日本全体にそれをふりまいた。
そしてついに手ごたえがあった。
一人の日本人が、そのものほしげにさまよう原始的な思考を捕捉し、それを自己の思考としたのだ。
その心はその思考(警戒、買い占め、現政権への反発)を強化し、拡大し、組み立てた。中国人はそれを追跡した。

 彼はむりをしなかった。その思考が中国人のものだという疑いを相手に起こさせるようなことはなにもしなかった。
しかし、日本人はその思考に集中している間に、無意識のうちに中国人が自分の心に侵入してくることを許してしまった。